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病院・薬局勤務の薬剤師が医療スタートアップへ〜事業会社で見つけたDXの可能性〜

薬剤師としてのキャリアをスタートし、今は医療DXの領域で活躍する児玉さん。今回は、医療とテクノロジーの融合により、新しい価値を生み出そうとしている彼の挑戦について語ってもらいました。

児玉 亮二(こだま りょうじ) プロフィール

薬学部の大学を卒業後、神戸市立医療センター中央市民病院に入職。薬剤部にて調剤、治験業務を担当。その後、株式会社マツモトキヨシへ転職し、調剤薬局やドラッグストアの薬剤師業務に携わる。2019年より株式会社ミナカラに入社し、管理薬剤師として薬剤師や物流拠点のマネジメントを担当。また、オンライン服薬指導のオペレーション構築や、医薬品EC事業のPM・マーケティング業務、自社ECサイトの開発・運営やKPI管理など幅広く経験。2024年にファストドクター株式会社へ入社、オンライン診療のDX推進を担当。


事業会社へ転身するまでの道のり


薬剤師を目指したきっかけについて聞かせてください。
ーー児玉:子供の時から理系科目が好きで、高校は理数系のコースに進みました。当時、母が薬局で勤務していたこともあり、医療には自然と興味があったんです。最初は医師を志望していたんですが、他人の血を見ることが苦手という致命的な弱点があることに気づいて(笑)よくよく考えると「人を健康にするって手術や処置を除くと、薬の役割も大きい」と思い至り、病気を治すことができる「薬」に興味を持ち始めました。

それから大学で薬学部に入り、最初のキャリアとして病院での勤務を選択されたんですね。
ーー児玉:はい、大学では薬学の基礎をしっかりと学ぶことができました。一方で社会に出てから「それだけでは全く足りない」と実感したんです。例えば、病院では注射薬の配合変化や投与速度といった、患者さんの安全に直結する知識が必要でしたし、薬局では患者さんとのコミュニケーションが非常に重要でした。

 両方の現場に共通していたのは、非常に忙しい現場で「いかに効率的なオペレーションを組み立てるか」という課題です。また薬局では、数多く調剤薬局が存在する中で「患者さんに選んでもらえる薬局になるにはどうすべきか」を考える必要があり、現場で直面する課題に即した対応力や実践的なスキルが求められることを痛感しました。


その後、事業会社へと転身されていますが、その決断の背景を教えていただけますか。
ーー児玉:振り返ると、元々学生時代から「エンドユーザーへの価値提供」にやりがいを感じていたと思います。例えば高校の文化祭の催し一つでも、クラスのメンバーと一緒に "いかに多くのお客さんに来てもらい、満足してもらえるか" を考えて実践することがとても楽しかったんですよね。薬局勤務の時もその頃と同じように、 “患者さんにどうやったら選んでもらえるのか” を考えるのが楽しくて。

 ただ当初は手探り状態で、根拠のない仮説で企画を実行していました。近隣住民の方向けの健康イベントを実施したり、薬に関するクイズのチラシを配ったり、私の趣味である謎解きを薬局内に掲示してみたり様々なアイデアを試しました。企画自体は患者さんには喜んでいただいたものの、薬局として”患者さんにどうやったら選んでもらえるのか”という問いに対して、アクションを打てているのかは、よくわかりませんでした。そこで、もっとビジネスを体系的に学びたいと思ったのが事業会社に転身したきっかけです。

いわゆる王道の薬剤師のキャリアを外れることへの不安はなかったのでしょうか。
ーー児玉:実は、あまりありませんでした。不安が全くなかったわけではありませんが、むしろ薬剤師免許を持っているからこそチャレンジできると前向きに捉えました。万が一うまくいかなくても、また薬剤師として働こう、と。また20代後半という周りよりも少々遅いタイミングでビジネス経験を得るなら、周りよりも早いスピードで成長していく必要があると考えていました。
そんな時に前職である株式会社ミナカラの創業者に出会い「ベンチャーの1年は一般企業の5年の経験ができる」という言葉をいただき、決心が固まったんです。

大きな意思決定でしたね。転職されてからは、これまでの環境と事業会社での働き方のギャップについて、どのようにキャッチアップされたのですか?
ーー児玉:振り返ると私の場合は8割は現場での挑戦や試行錯誤に費やし、残りの2割で必要な知識を本やセミナーなどの座学で学ぶというスタイルで、キャッチアップしてきたと思います

 まずはやってみる→
 やり方がわからなくても、わからないなりに考えてみる→
 周りに自分の考えがあっているかどうか聞いてみる→
 フィードバックを受ける→
 自分なりに整理して理解をする→
 理解したことを深めるために追加実践&追加勉強(本を読む、セミナーに参加する)


ということを繰り返しました。こうして少しずつ自分の仕事の型ができ、経験を積むことができました。


現場経験を活かして事業の成長に


事業会社での経験を通じて、特に成長を実感される部分はありますか?
ーー児玉:事業開発やWebマーケティング、ソフトウェア開発など、具体的なスキルはもちろん身についていますが、最も大きな変化は考え方そのものですね。例えば「なぜなぜ分析」といって、問題が起きた時に「なぜ?」を繰り返して原因を突き止めるのですが、このとき重要なのは、矢印を人ではなく事柄に向けることです。これをしないと同じ問題が再発してしまいます。また、Howを考えるためにはWhyが必要不可欠だということも学びました。今思えば、患者さんに選んでもらうためにも「どうやったら選んでくれるのか(How)」ではなく「なぜ選んでくれるのか(Why)」を考えることが大切だったんだと思えるようになったと思います。思考のプロセスがかなり鍛えられましたね。

その後、ファストドクターに入社を決めた理由はなんだったのでしょうか。
ーー児玉:これまでオペレーション側の人間として開発チームと一緒に開発を進めてきた経験から、さらにシステム開発のスキルを磨きたいという思いもありましたが、それ以上に事業全体の成長に関わりたいという想いが強かったんです。そのため、現在の上司である井本さん(オンライン事業本部 マネージャー / インタビュー記事「医療DX令和ビジョン2030」の先陣を切る。社会のためになる実感を求めてITコンサルからファストドクターに転職した話 )との面接で「ファストドクターのDXは単にシステム開発をするだけじゃなくて、とにかく現場のオペレーションに並走して事業成長させることがミッションだ」とお話ししてもらったことは、入社を決定した大きな理由になりました。

現在ファストドクターではどのような取り組みをされているのでしょうか。
ーー児玉:現在はオンライン診療事業のDXを担当しています。入社動機となった言葉の通り、本当に多岐にわたる業務に携わっていますが、主にオペレーション改善と外部アライアンスのディレクションを担当しています。

 オペレーション面では、サービスのユーザーの体験向上のために、まだまだ改善の余地が多い状態です。例えば、オンライン診療を提供するにあたって、スタッフが手動で行っているPCの作業工程の改善です。実際に現場に入ってその工程での課題を特定し、解決のためにエンジニアに開発を依頼したり、時には自身でローコードツールのRetoolを使ってアプリを開発したりしています。

 アライアンス面では、「仙台駅スマートクリニック」という、駅のホーム上でクリニックを開院し、そのオンライン診療提供をファストドクターが支援するという画期的なプロジェクトで、実現のためのスキーム検討やディレクションを担当しました。実はこのプロジェクトを任せてもらえたのが入社4ヶ月目くらいのタイミングで、新しい取り組みにおけるオペレーションを考えきって、無事にリリースを迎えられたことは、私にとって大きな自信になりましたね。(詳細:東北初!仙台駅改札内に「スマート健康ステーション®」を展開します!


児玉さんはオフィスに出社する際は、いつも開発チームの席ではなくオンライン診療事業のエリアに座っていますよね。

ーー児玉:そうですね。近くにいた方が具体的に何に困っているのかタイムリーにキャッチできるんです。オンライン診療を最前線で対応している現場のメンバーがちょっとした困りごとがある時に「開発チームに相談することなのかわからない」と遠慮しているように感じたので、それであれば自ら拾いに行こう、と。


オンライン事業 DX担当 児玉さん(左)・ 同事業 オペレーショングループ 篠田さん(右)

例えば、オンライン診療にはビデオ通話を用いるのですが、患者さんの環境によっては「映像が繋がらない」という事象が起きえます。その時、操作方法を電話口で具合の悪い患者さんに説明することって、お互いに難しいですよね。そのような、双方のストレスを軽減するために改めて何に困っているのかをオペレーションに沿ってヒアリングしました。ヒアリングから得た課題に沿って、患者さんが自身で解決できるようにFAQを作成したり、そのFAQが患者さんの目に留まるように、診察を待っている間は、診察の待ち時間が表示されるマイページからそのFAQに飛べる導線を作ったり、診察後のビデオ通話を切った後の画面に薬の受け取り方法に関するFAQを表示するなどの小さな工夫を重ねました。その結果、患者さんの体験向上に繋げていけたと思います。
まさに「開発スキルで改善する」と言うよりは「事業を成長させるため」に地道に動いた事例だと思います。

診察前の「保険証などの必要情報をご登録いただく画面」では、保険証等に関するFAQを表示


患者さん目線の改善ですね。ファストドクターでの経験を通じて、特に成長を感じる部分はどこですか?
ーー児玉:自身で開発に携わることで、要件定義の重要性を痛感しています。さらに言えば、要求定義(ビジネス上、何を達成したいのか)を明確にすることの大切さも実感していますね。開発チームに依頼する際は、単に要件定義を提示するだけでなく「要求定義」も必ず伝えるようにしていて、そうすると開発チームから「その要件からはずれるけど、この要求を満たすためにはこちらの方法が良いのでは?」といった提案をもらえることで、建設的なディスカッションが生まれるんです。

また、オペレーション構築や、自社ECサイトの開発・運営やKPI管理などのビジネスサイドの経験もあるため、オンライン診療統括部長・三井さんと連携し、事業成長にも意識を向けています。例えば三井さんが「薬の受け取り方法に関して薬局受け取りで取り入れてるスキームを自宅配送にも取り入れたい」と言っていた場合です。こう言う時に、DX担当として、自宅配送のスキーム変更を行うことで必要になってくる

  • システム面でどのような改修が必要になってくるか

  • オペレーション面の影響、改善が必要か

  • 他部署が行っているオペレーションへの影響の考慮が必要か

などをヒアリング、壁打ちをしながら、実現したいことを具体的にしていきます。それをタスクに落とし込んで、現場への連携を三井さんにお願いしたり、システム側は私が担当したりと、良いバランスで進められていると思います。社内でも良いコンビネーションだと評価していただいています。


オンライン診療統括部長 三井さん(左)・ DX担当 児玉さん(右)


薬剤師の新たなロールモデルへ


児玉さんの今後の展望についてお聞かせください。
ーー児玉:個人のミッションとして「薬剤師の新たなロールモデルになる」ということを掲げています。従来、薬剤師の進路といえば病院、薬局、ドラッグストア、MR、CRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)というイメージがあるかと思いますが、薬剤師の活躍の領域が医療現場だけではなく他にもあるということを体現したいです。

現在、私はオペレーションの改善だけでなく、患者体験の向上や、オンライン診療後に患者さんが受け取る処方箋を送る、その先の’薬局’のことを考えた改善を行っています。これは薬剤師としての経験、事業開発でのアライアンス推進経験、開発チームとの協働経験があり、現場での解像度が高いからこそできることです。
こういう積み重ねを繰り返し、結果的に医療や社会全体が良い方向に向かうようになればなと思っています。

最後に、未来の仲間へメッセージをお願いします。
ーー児玉:ファストドクターはまだまだ成長途中であるため、それだけに改善の余地が無限にあります。根拠のある改善提案は積極的に受け入れられる環境です。もちろん、オペレーションの変更に伴う不具合も発生することがありますが、現場メンバーを中心に「最終的にオペレーションが良くなるなら、多少の不具合は大丈夫」という前向きな姿勢で協力してくれます。

一定規模の組織なので、きちんとした説明やステークホルダーとの調整は必要ですが、その分改善のインパクトも大きく、サポート体制もあります。PDCAを回しながら事業を成長させたいと思っている方と、ぜひ一緒に働きたいです!



児玉さんありがとうございました。

児玉さんと同じように医療業界でのご経験を活かして、新しいチャレンジをしたいと感じている方。
オンライン診療に少しでもご興味をお持ちいただけた方。

ぜひファストドクターの門を叩いてみてください。
お待ちしております。

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