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前スマートニュースUSシニアディレクターが日本のスタートアップであるファストドクターへ入社したワケ

今回は、元スマートニュースUSから転職し執行役員/Vice President of Productに就任した西岡悠平さんのインタビュー記事です。20代で開発したソフトウェアの独創性と技術力が評価され、「未踏スーパークリエータ」に認定。その後、日米のIT関連企業でAI(人工知能)やML(機械学習)分野を推進するエンジニアとして活躍されてきました。そんな逸材が今なぜファストドクターに入社を決めたのか、これまでのキャリアと転職への率直な想いを語ってくれました。

西岡 悠平プロフィール
京都大学大学院 情報学研究科修了したのちにシスコシステムズ株式会社入社し、煩雑な作業・業務をWebアプリケーション化することを目的として開発したオープンソース「Tuigwaa」の開発で、2005年に「未踏スーパークリエータ」に認定。その後、4次元データ株式会社入社、2008年には楽天技術研究所入所して自然言語処理や画像処理、機械学習などの先端技術の研究開発をリード。2014年、スマートニュース株式会社入社し、日米4,000万ダウンロードを超える「SmartNews」システムのデータ処理や機械学習分野におけるアルゴリズムやデータ構造の設計および実装を担当。2018年にSmartNews Internationalへ転籍し、アメリカの州ごとのローカルニュース機能や政治的情報提供の公平性を担保する機能を責任者としてリードし、リリースまで導く。2023年にファストドクターへ入社。


キャリアの始まりは買ってもらえなかった「ファミコン」だった

ファストドクターのプロダクト開発責任者に就任

ーー最初に伺いたいのは、西岡さんが就任されたVice President of Productの役割についてです。どのような役割を担う立場なんでしょうか。

西岡:
ファストドクター全体のプロダクトの開発責任者の立場になります。部門としては、2022年12月にできたファストドクターテクノロジーズというテック組織に所属することになります。そこでプロダクトマネージャーとして、これまでの急性期医療の取り組みに加え、5疾病6事業および在宅医療といった幅広い領域で

  • 一貫したサービス体験を提供できるプラットフォームをつくること

  • デジタルならではの新しい医療UX(ユーザー体験)を可能にする医療DXプロダクトを作り上げること

が中心業務になります。

ーーアメリカで経験を積まれた西岡さんにジョインしていただけて、本当に嬉しく思っています。次に、これまでのキャリアを教えていただけますか。

西岡:
コンピューターとの関わりからざっと話しましょうか。最初は中学生のときでした。実は、親がファミコンを買ってくれず、、、(笑)代わりにパソコンを買ってくれたので、大学生だった従兄からプログラミングを教わって自分でゲームをつくって遊んでいました。ゲーム自体には興味はなくて、自分で作ったものが動くことがとにかく楽しかったですね。その体験が大学で情報学科に進む動機になり、大学院ではコンピューター漬けで、友人とアルバイトで大手企業から受託したソフト開発もしていました。

会社勤めの傍ら開発したソフトで「未踏スーパークリエータ」に選任

ーー新卒で入った会社は外資系のシスコシステムズですね。

西岡:
スーツを着てかっこよく仕事をしている外資系に行きたいなと思って、当時、株の時価総額が世界一高かったシスコシステムズを選びました。システムエンジニアとしてアメリカで作られたネットワーク機器を日本のお客様に提案していたのですが、導入後のトラブルが結構多かったんです。人が作ったものを売るくらいなら、やっぱり自分で作りたいと思うようになって、会社勤めをしながらプライベートの時間に、Webアプリ開発を支援するオープンソースソフトウエア「Tuigwaa(トゥイガー)」を友人と共同開発しました。これが、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する、優れた若手エンジニアを発掘育成する「未踏スーパークリエータ」に選ばれることにつながりました。

シスコシステムズを退職してTuigwaaの開発に専念し、実用化を目指してシステム会社に転職しましたが、途中で経営環境が変わって好きなように進められなくなり、知人からの誘いで2008年に楽天に転職しました。楽天技術研究所で自然言語処理や画像処理、機械学習などの先端技術の研究開発に取り組んだのですが、この楽天での経験が今の自分を築いたと思っています。楽天には6年間在職し、本当にお世話になりました。

ーー楽天を辞められたあとは、設立2年のスマートニュースに入られましたね。

西岡:
スマートニュース創業者の一人で現在、取締役COOの浜本階生さんに声をかけてもらったことがきっかけです。2014年9月に入社した当時は社員20人ぐらいのまさにスタートアップで、純粋にテクノロジーを追求できるのではないかと考えて入社しました。スマートニュースには「政治」「経済」「エンタメ」などのタブがありますが、当時は政治のカテゴリーにエンタメ記事が出てきたりしていたんです。そういう細かいところを修正しつつ、創業者が一人で作り上げたシステムをまず分解して、プラットフォーム化してその後に新機能を追加しやすいようにしたのが最初の大きな取り組みですね。その後の一番大きな取り組みは、その人に合った良質な情報を配信するニュースのパーソナライズ化でした。そのプロジェクトをリードして無事にリリースして、結構やり切ったと感じて、会社として力を入れようとしていたアメリカ市場に私も参加することにして、2018年にスマートニュース・インターナショナルへ転籍しました。

アメリカでのターニングポイント

ーーアメリカではどんなことに取り組んだのですか。

西岡:
ユーザーに刺さる機能を2つリリースしましたね。1つは政治的情報提供の公平性を担保する機能です。大統領選を見てわかると思いますが、アメリカは共和党、民主党の2大政党をもとにした社会の分断があります。立場の違いによる2極化が進むなかで、お互いを理解できるような社会をつくりたいと思い、双方の意見が簡単に見られる機能を開発してリリースしました。もう1つは、地域ごとのローカルニュース機能の拡充です。プッシュ機能を付けたり、トップページにローカルニュースを載せたりしたのですが、これが新型コロナ感染症の拡大で、ユーザーの爆発的な伸びをもたらしました。外出できず、周りで何が起きているのかわからない環境下でローカルニュースが安心材料になったんです。

ーー西岡さんのお話から、プロダクトを作る根源に「良質なものをユーザーに提供したい」という強い信念を感じます。精力的に働かれたアメリカでの経験で得たものは何でしたか。

西岡:
アメリカで「アメリカに住んでいる人々」への開発も良い経験になりましたが、渡米して良かったことの1つは、私の上司でプロダクト開発責任者を務めていたジーニーに出会ったことです。プロダクトマネージャーはどうあるべきか、その役割や姿勢を彼女から学びました。プロダクトマネージャーは会社の製品やサービスの開発に責任を持ち、成功に導く役割で、テクノロジーとビジネス両面の知見が求められます。技術的には何が出来そうか、ビジネス的にはこれが肝になるといった両方を見極めて最適なプロダクトをつくる。そこで必要になるのは関わる人たちの意見を聞き、みんなをつなぎながら正しい方向に導く力です。私はエンジニア上がりのプロダクトマネージャーとして当初はコミュニケーションが下手だったと思います。ほかのエンジニアに対して一方的に勝手なリクエストを出す態度だったのを、アメリカにいた5年間でジーニーの振る舞いから学び、成長できたのではないかと思っています。

「IT×現場」から価値を生み出す仕事に取り組みたい

ーーそうした経験を積まれて2023年2月にファストドクターに入社されたいきさつを教えてください。

西岡:
様々な状況やタイミングが重なり、スマートニュースの外を見ることなりました。ファストドクターの水野代表とは楽天時代から付き合いがあり、1〜2年に一度ぐらいのペースで会っていました。今年の年明けに帰国した際にも会いました。そのときに聞いたファストドクターの近況が想像以上に面白くて、とにかくすごいなと。救急往診サービスの会社だと思っていたのが、オンライン診療を始めて、クリニックや自治体との医療連携も進めている。この事業には未来があると感じました。もっと話を聞かせてほしいと水野代表に伝えて、入社に傾いていった感じです。

ーー入社の決め手は何だったのでしょうか。

西岡:
会社のポテンシャルと自分が活躍できそうな場所だと感じたことです。アメリカ企業への転職や日系企業のアメリカ支社の面接も受けましたし、日本国内のスタートアップも見ましたが、ファストドクターがもっとも興奮させてくれました。ファストドクターは少子高齢化における日本の医療の課題に果敢に取り組んでいます。これは世界的に見ても大きなチャレンジです。情熱と高いスキルを持ち合わせた社員がいて、医療DXを進めるための技術への投資を惜しまない。そして、医師が患者さんを診察する医療現場があります。これまでは情報を扱う仕事でしたが、ITと現場作業が重なり価値を生み出す仕事に取り組んでみたいと思いました。

ーー今後どんなことにコミットしたいですか。

西岡:
ファストドクターが掲げる「ビジョン2030」を達成することです。

ーービジョン2030では「1億人のかかりつけ機能を担う」をうたっています。これはファストドクターが今後、がん、脳卒中、心筋梗塞などの「5疾病」、救急医療、へき地医療、周産期医療、新興感染症などの「6事業」および在宅医療に取り組むことを宣言したものですが、どうすれば達成できるのでしょうか?

西岡:
入社して感じたのですが、そのビジョンに向けた事業のタネはすでにいっぱいあって、いい感じに芽吹いているものもあります。私がやるべきことは、それらをシステムと連携して、良いユーザー体験をプロダクトとして提供できるようにリードすることです。培ってきたレコメンデーションエンジンやマシンラーニングなどの開発経験を活かしていきたいと思います。まず手を付けたいのは、ファストドクターの会員基盤をしっかりと築くこと。ファストドクターの各種サービスが1つの会員IDで受けられる形にする。それとアプリの精度を上げることですね。

パッションを感じる人と共に働きたい

ーー今後、どんな人と一緒に働きたいですか。

西岡:
パッションを感じる人ですよね。スキルとかチームワークとかベーシックなところも重要ですが、「これを作ったら患者さん喜ぶね」「お医者さんは楽になるよね」という熱い思いをもって一緒に仕事を進めていける人です。ファストドクターテクノロジーズではエンジニア、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー等を募集しているので、その考えに共感する人に来てほしいと思います。

ーー最後に、この記事を読まれてファストドクターへの入社を考えている方にメッセージをお願いします。

西岡:
最後に日本とアメリカの医療の違いを話して、読んでくれた方へのメッセージにしたいと思います。日本は全員が公的医療保険に加入する国民健康保険制度があり、誰もが「かかりつけ医」を持てて気軽に医療が受けられます。一方のアメリカでは多くの人は民間の保険に入っていないと医療が受けられないし、保険料も高いです。ただし、そこだけをみて両国の医療サービスの優劣は言えないと思っています。例えば、アメリカの代表的な医療保険団体のカイザー・パーマネンテは総合病院も経営していて、カイザーの保険加入者はアプリから診療の予約ができ、健診結果が受け取れます。何か気になる症状があればメッセージを送り、医師からの指示がもらえるなど医療DXが進んでいます。ファストドクターの「ビジョン2030」を聞いたとき、このカイザーでの医療体験を思い出し、日本で実現できないかと思いました。

この数年続いたコロナ禍で医療・健康がいかに大事かということをみんな実感したと思います。医療は人が生きていくうえでの中心テーマです。高齢化先進国の日本で作られた医療DXプロダクトは、きっと世界に広げることができるこの難題は人生をかけて解くに値するものです。ぜひ一緒に解きましょう。

文:斉藤 泰生
撮影場所:ポートシティ竹芝WeWork内

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