【部長noteリレー】上司にも顧客にも「素直」でいることがもたらすもの
時間外救急から医療プラットフォームとして急成長を続けているファストドクター。その成長の裏には、現在は部長職やシニアマネージャーとなった人たちの数々の挑戦と成果によって実現したといっても過言ではありません。
ファストドクター主要3事業のうち、地域のかかりつけ医の負担軽減を目的とした「在宅医療支援事業」。この事業を立ち上げ、管理・運営をリードしているのが法人事業部現部長の小山翔さんです。
本記事では法人事業部部長の小山翔さんに成長過程にあるスタートアップ企業で、どのように仕事と向き合い、どのように自分の役割を認識して壁を乗り越えてきたのかなどについて伺いました。
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医療機関向け事業をゼロから立ち上げる。そのターニングポイントとなった出来事
ーー小山さんが入職されたときに思い描いていたことは、今実現できているのでしょうか。
小山:
私は、医療機関向けの事業をゼロから作るということで代表取締役社長の菊池さんからオファーをいただいて入社しました。そのため、医療機関に求められる役割・機能が何なのか、どういう品質で、どんな支援をするべきなのかを菊池さんと一緒に考えて形にして広げていくことを思い描いてジョインしています。「実現できている」という定義をどこに置くかですが、細かい部分に目をつぶれば実現できていると思います。一方で、部長職になってからは、メンバーのマネジメントや承認・判断をする場面が圧倒的に増えたので、新規プロダクトの企画、品質改善、サービス提供先にどう価値を届けるかというところに時間を使えていないのは、少し寂しさがあります。もちろん、組織の拡大と共に役割が変わっていくのは当然なので理解してはいますが。
ーー法人事業部におけるターニングポイントはどのようなことがあったでしょうか。
小山:
事業を立ち上げたばかりの頃に、自身の営業として初めて発注いただいたクリニックさまとのやりとりが今でも思い出されます。当時は現在のようにサービス内容が充実していたわけではないので、毎週クリニックの事務長さまと打ち合わせを行わせていただき、一緒に改善策を検討しながら、PDCAを繰り返していたんです。薬の処方フローやコールセンターの対応方法、在宅患者さまとのコミュニケーションの取り方など、在宅医療に関する気づきを多くいただきました。本当に至らない点が多かったと思うんですが、そのクリニックの方々は我々に期待してくれていることを包み隠さずに話してくださり、この期待に応えるためにも頑張らないといけないと奮起するきっかけになりました。さまざまなチームを立ち上げて、サービス改善を行っていくための土台づくりとなったターニングポイントだと思っています。
ーー当時と比べて、小山さんが目指すサービスレベルには今どのくらい近づいていますか。
小山:
どうなんでしょう、半分くらいは近づいてきているのかなあ。でも、まだまだたくさんやれることはあると思います。特に在宅医療支援事業は、患者さまや医療機関ごとに求められるサービス内容が異なります。そこに関わる主治医や看護師、ケアマネジャーなど、1人の患者さまを支える方のさまざまな想いがあるので、我々がその想いを紡いで業務を全うしなければならないという難しさを抱えています。そのために、各医療機関が使用しているカルテシステムのAPI連携、情報連携システムの自社開発など、改善は進んでいるものの、まだまだ課題は多く残っています。
素直でいること、それがお客様の喜びや満足につながる
ーー小山さんのこれまでのキャリアのなかで、今でも大事にしている言葉やエピソードなどはありますか。
小山:
たくさんあります。以前の職場で私が人生の師匠だと思っている上司がいて、彼からはさまざまなことを教わりました。それを若い世代に伝えていきたいなと常々思っています。なかでも「素直でいること」はとても大事にしています。当たり前ではありますが、物事を素直に受け止めて、自分で考えて判断して行動すること。そうすればサービス提供先の皆さまがどうしたら喜んでいただけるのか、満足していただけるのかを考えられるようになると思っています。
ーー素直でいることとして、たとえば仕事で求められていることと自分の性格ややりたいこととが合わない場合、どういうふうに受け止めていくのでしょうか。
小山:
合わないときは合わないし、無理に合わせなくていいと思います。多様性があって、いろんな意見があっていいんじゃないかなと。たとえば、私も直属の上司である菊池さんと毎日コミュニケーションをとりますが、自分の考えと違うときは、「それはどんな狙いがあるんですか」「もっとこうしたほうがいいんじゃないですか」とはっきりと伝えることもあります。上の人がこう言っているからすべて合わせなきゃいけない、指示に従わなきゃいけないとは考えていなくて、議論をすることはむしろ健全だと思っていますし、菊池さんもそれを期待して私に様々な話をしてくれているのだと思います。そう思うと、イエスマンにならないほうがいいというか、自分が思っていることや考えていることを上司に伝えるのはとても大事で、議論をしたうえで納得感を持って仕事をしたほうが業務効率も上がるし、視野も広がると感じます。
ーー上司に意見することってなかなか難しいことなのかなと思うのですが、その勇気はどこからくるんでしょうか。
小山:
逆に、私は言わないほうがもったいないと思ってしまいますね。最終的な意思決定をするのは上の立場の人ではありますが、多様性の話も含めて選択肢を広げたほうがいいと思っています。同じ意見だったら「そうです」と言えばいいし、違うと思っていたら「こういう考えもあるんじゃないですか」と、上の立場の人に伝えるのが部下の役割だと私は思っているので。反対にイエスマンになってしまうと、上司は「この人は本音で言っていないな」と気づきますし、結局損をすることになるとも思うんです。
ーー最終的に上の立場の人が意思決定するとして。もし自分の意見とは違うことを実施することになった場合、そこの納得感をどのようにつくるのでしょうか。
小山:
これはちゃんと話をして解消するしかないでしょうね。それでもやりたいということは、それなりになにか背景があったり、そこに至ったプロセスがあるわけで。話を聞いて、筋が通っていればいいと思います。
菊池さんと意見が食い違ったエピソードとして、全員でコールセンターのSV業務を24時間勤務体制でやってみよう!ということがありました。当時はメンバーが自分を含めて3人ということあり、もちろん私は「さすがに全員で日々の営業活動や企画業務を止めてSV業務に振り切るのはキツい」と思って反対していたんですが、一方で、事業を立ち上げたばかりでもありトラブルも発生してしまっていたので、「運用フローの見直しのためには荒治療が必要だ、1ヶ月だけやってみよう」という流れになったんです。
提案をした菊池さんは、どの時間帯にどういう問い合わせが多いのか、どれくらいの内容だったらどのくらいのスピードで返さないといけないのかを身をもってわからせようとしていただいたのだと思います。
結果的に、全員でシフトを回して1日の流れを全部吸収しようということになり、実際に2022年の2月に実行しました。正直、どうなることかと思いましたが、今思えばやってよかったと感じています。サービス改善のエビデンスとして十分な経験ができましたし、在宅医療支援事業と救急往診事業で独立してコールセンターを配置するという意思決定のきっかけにもなりました。また、在宅医療支援事業には、専用の情報連携システムが必要だよねという話にもなり、「クリニックポータル」を自社で開発することにもつながっています。頭では理解していても、実際に自分自身が現場を経験したうえで、実体験として課題を見つけ出し、解決に導くことができたのは非常にいい経験でしたね。
部下が楽しく働いている姿を見ること、そして忘れられない出来事
ーー小山さんにとってどんなことが仕事のモチベーションになっているでしょうか。また、印象に残っているエピソードはありますか。
小山:
ひとつは、部下が楽しく前向きに働いている姿を見ることですね。先ほどの尊敬する上司が当時40代前半で、「優秀な後輩や部下を育てるのが究極の幸せだ」とよく話していました。これは孟子の言葉で、「父母兄弟が無事なこと、天や人に恥じないこと、天下の英才を教育すること」という「君子の三楽」の1つだったんです。最近その上司と同じ年齢になってきて、ようやくその楽しみがわかってきました。人が成長していくところ、楽しく働いている姿を見るのは自分が成長するよりも嬉しいし、自分がそこに関わってポジティブな影響を与えられたとしたら、さらに幸せなことだなと思うようになりましたね。
ーー孟子の言葉なんですね。会社の人数が増えていくなかでそのように思えるのは、素敵なことですね。
小山:
はい、すばらしい環境で働くことができて幸せです(笑)。もうひとつのモチベーションは、月並みな表現になりますが、我々に期待してくださり契約していただいている医療機関や患者さま、そしてそのご家族さまなどに喜んでいただけることです。サービス提供先の皆さまの幸せをどれだけ生み出せるかに尽きると思っています。喜んでいただいたエピソードとは少し違うかもしれませんが、ある地方で初めて契約となったクリニックの院長先生にご挨拶に伺ったときのことが強く心に残っています。アイスブレイクで話をしようと思っていたところ、突然その先生がポロポロと涙を流し始めたんです。「自分は在宅医療をやっていて、本当は1人ひとりの患者さんにちゃんと向き合って対応したいと思って今まで頑張ってきたけど、もうこのままだと疲弊して死んでしまうと思う」と、心の内を話してくださいました。
責任感や使命感が強いがゆえに、ご自身を極限まで追い込んでしまっていたのかもしれません。「そんな状況のときにファストドクターからサービス案内をいただき、自分はこれを使うしかないと思った」と仰ってくださいました。その話を聞いたとき、涙ぐみながらお話くださる院長先生を前にして、「こういう先生のために我々は頑張らないといけない」と強く思いました。このように、契約先の医療機関にご挨拶に行くと今までつらかったことや我々に期待してくださっていることをお教えいただけることがあります。これからも、患者さまや地域医療への想いや気概を1つひとつ受け止め、忘れないように働いていこうと思っています。