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医師インタビュー「ファストドクターで世の中の動向を把握し、救急往診での経験を本業の訪問診療でも活かす」

救急往診現場で働く医師へのインタビュー記事"第2弾"は、ご自身で開業し在宅医として活躍している渡邊先生によるインタビューです。
新型コロナの第1波から往診現場で患者さんに向き合っている先生は、この第8波でも大いに医療提供に貢献してくださっています。

ぜひ、ご覧ください。

渡邊 譲医師
年齢:30代後半
ファストドクター勤務歴:3年
勤務エリア:東京、千葉、埼玉など

※取材内容は2022年11月時点のものです。

①現在の働き方

ーー渡邊先生のこれまでのご経歴と現在の働き方についてお伺いしたいです。
大学を卒業してからは、大学附属病院の外科学講座に所属し、外科専門医を取得しました。サブスペシャルティとしては、呼吸器外科専門医を取得して、 肺がん手術や関連する抗がん剤などの薬物治療、緩和医療などが専門でした。 その後、医系技官として厚生労働省で働いたこともあります。2019年からは関東で訪問診療を始め、2021年に荒川区で訪問診療メインのクリニックを開業し、日中は主にがん診療や緩和ケア・在宅医療に携わっています。

ファストドクターの夜間勤務は、自分の体力に合わせて調整しています。決まったシフトがあるので、19時から24時までと24時から翌朝6時までの2シフト(1時間の休憩時間を含む)の勤務です。実際には、患者さんからの往診依頼が入らなければ、勤務を早めに終えることもあります。

②ファストドクターで働くきっかけ

ーーファストドクターで働くきっかけについて、どのような経緯で応募されたのでしょうか。
2019年頃、フリーランスで働いていたときに利用していた求人サイト経由で、申し込んだと思います。 理由としては、今後の展望のための資金を貯める目標があって働き口を探していたこと。また、訪問診療も一通りやってくると、もう少し広い範囲で診療をやりたいと思い、勉強も兼ねてです。当時は日中の訪問診療が18時に終わることが多かったのですが、だいたい医師の夜勤は18時始まりのところが多いですよね。そのため、なかなか日中の診療後に夜勤の仕事ができないことをネックに感じていて…。その点、ファストトドクターだと19時や20時から勤務を開始することもできますし、自宅へ送迎に来てくれることも日中の仕事と組みやすくていいなと思っていました。

③ファストドクターで働いてみて

ーーファストドクターで働かれて約3年、実際に働いてみていかがですか。
初期診療ではありますが、一般内科をメインに、自分のクリニックではあまり診療しない小児や整形外科の領域もやらせてもらっています。実際に働いてみて、夜間病院に行けなくて不安がっている患者さんのところに行くことが多いので、行った後は感謝されることも多いですね。往診後に患者さんからのアンケートも自分の元に届くので、「ここが良かったです」「こうしたほうがいいなと思いました」と具体的にコメントをいただけると、すごく励みにもなりますし、その上勉強にもなるので、嬉しいことが重なります。

ーーなにか本業でも活かせるなと思ったことはありますか。
今、訪問診療メインのクリニックの仕事をしてるので、子どももたまに来るのですが、ファストドクターで得た小児科の知識はすごく役に立ちます。何より、このコロナ禍でかなりの新型コロナ感染症の患者さんを診てきたので、クリニックのほうでも新型コロナウイルス感染症に関する相談があったときには、診療方法から自治体への届け出方法について、スムーズに答えることができます。 また、他の知り合いの先生から「今どんな薬を使ってるの」と聞かれることも多いので、「ファストドクターだと、今はラゲブリオとゼビュディ(※)を使っているよ」と情報交換することもできています。世の中の動向や救急往診の知識を常にアップデートすることができていると感じますね。
(※2022年11月時点での薬剤使用状況)

ーー先生は実際に馴染みの土地で訪問診療をされていますが、地域医療サイドから見たファストドクターとは、どんな存在でしょうか?
地域医療サイドからみても、大変ありがたい存在です。訪問診療が必要な患者さんは、基本的にかかりつけ医が往診しますが、ときには地域包括ケア担当やケアマネジャーからかかりつけ医のいない患者の診察を依頼されることもあります。特にコロナの診察を希望される患者さんが多いですね。そうした場合に、患者さんの数に対して、自分のクリニックでは対応しきれないことがあるので、ファストドクターの存在を伝えるようにしています。その際に「初回でも往診に来てくれる医師がいて助かりました」と感謝されることが多く、こういったところにもニーズがあるのだなあと思っている次第です。

ーー働く前と働いた後で、ギャップのようなものはありましたか。
そんなに大変だったなということはないですね。何か困ったことがあったら、事務局に相談すると対応完了まで伴走してくれるので、その場で解決できてとても助かっています。たしかに、新しいシステムに慣れるまで時間はかかりましたが、今でも覚えているほど大変だった記憶はありません。ファストドクターでは、現場で働く医師に対してさまざまな工夫をしてくれていて、診察に集中できるようにシステムが組まれているので、カルテも慣れてしまえば数分で記入することができ、全くストレスがないですね。

最近でいえば、『身体チェックシート』が新しく導入されましたけど、意外とやってみると、患者さんの満足度は高い気がしますね。チェックシートを使って患者さんにもう一度説明すると、「診察結果がよくわかりました」と言われることが多いです。

身体チェックシートの見本

また、ギャップとは少し違うかもしれないですけど、移動距離が長いときは思いのほか時間に余裕ができるので、どうやって時間を活用しようかなと考えています。ネックウォーマーで枕を作って寝てみたり、最近は『Nreal Air』というARサングラスを買ってコンテンツを大画面で楽しんだり…。こうしていろいろと工夫して診察時の空き時間有効活用しています。

④実際の往診場面でのエピソード

ーー渡邊先生が印象に残っている場面などはありますか。
たくさんありますね。そうだな…子どもやご家族の対応はまだ慣れていないところもあるので、安心させてあげることがまだまだ苦手だなとは思っています。「大丈夫ですか」と聞かれて、『大丈夫かどうかは検査してみないと…』と事実をそのまま言ってしまったことがあり、もう少し声のかけ方に気を付けなければいけないなと思ったこともありました。

ただ、子どもの肘内障の整復が成功したときは、周りにいた家族の喜び具合がすごく印象的でしたね。外国の方のお宅に伺ったこともあるのですが、整復したときに「wonderful!」と大喝采ですごく感謝していただきました。しかしながら、言葉は全然わからなかったので、とりあえずボディランゲージを交えながら日本語と英語で話しかけ、細かいところはスマホのGoogle翻訳を使ってやりとりしました。中国語と英語は、たまに往診現場でも活用する場面があるので、勉強しようと思っています。

あとは、コロナ禍で呼吸状態の悪い患者さんがいて、救急隊と一緒に救急搬送先を探していたんですけど、自分の勤務時間を過ぎても一向に見つからなくて、そうしたときにファストドクターの創業メンバーでもある名倉先生が引き継ぎで来てくれたのがすごく印象に残っています。「あとは僕がやっておくので、大丈夫ですよ!」と言われて、すごく頼もしくて安心したのを覚えています。

ーー救急搬送が困難なケースにあたることもあったんですね。
そうですね。自分ひとりの力ではどうにもできない場面というのは、往診の場でも目の当たりにします。救急搬送するか迷う場面もありますし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時期には病院の受け入れが難しいこともありますし…。入院中であれば、もっとできることがあるけど、往診の場ではどうしても限界がありますから。とはいえ、自宅でできる最大限の処置を行うのが僕たちの役割でもあるので、そのあとはフォローアップチームに連携し、入院できるまで患者さん、あるいはそのご家族とこまめに連絡をとって経過観察を行って、医療を施しています。たまに不安になることもありますが、単回介入でも命を繋ぐ・医療を支える者のひとりとして関われていると、実感する場面でもあります。

⑤ファストドクターで働くのに向いている人とは

ーー最後に、ファストドクターで働くには、どんな人が向いていると思いますか。
やっぱりフリーランスや自営業のように、日中の仕事がある程度調整できる人には、おすすめだと思います。夜間がすごく忙しかったから、次の日の勤務はちょっと調節しようかなと、できたほうが楽かもしれません。そうでなくても、日中の仕事で物足りないと感じる人は、夜の仕事先として組み合わせやすいので。今の仕事よりもっと労働の対価を得たい、勉強したいという人にはすごくいい仕事だと思っているので、周りにもよくそう言ってますね。


文・白石 弓夏

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