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【医師インタビュー】ママ業と医師を両立させながら、地域医療につないでいくことのやりがい

救急往診現場で働く医師へのインタビュー記事"第4弾"は、ビジネスサイドを経て子育てをしながら医師を目指した三井先生へのインタビューです。三井先生は、2022年3月頃からファストドクターの医療提供に貢献してくださっています。
ぜひ、ご覧ください。

三井 愛先生
年齢:40代前半
ファストドクター勤務歴:1年
勤務エリア:神奈川など

2023年3月のインタビュー時点

ワンオペママ医師がたどりついた“良いとこ取り”の働き方

ーーまず初めに、先生の今について教えてください。
私はコンサルタントとしての社会人経験を経て、子供が1歳の時に医学部に入学し医師になりましたので、今年で8年目になります。もともとは外科の常勤医ですが、昨年から内科の常勤医として総合病院で働いています。内科と言いながら、週1回は手術、1日の半分は救急を担当しています。
 
外科専門医に加えて、実は登山医学会専門医でもあって、日本山岳ガイド協会や長野県の認定する登山ガイドやマウンテントレーナーの資格なども持っているので、私の名前で検索したら登山系の情報も出てくると思います(笑)。今年度は日本山岳ガイド協会のガイド養成講座のスポーツ健康科学分野の講師も拝命しましたし、昨年ついに「お医者さんガイド」としての活動も公式に始めるため、登山ガイドオフィスも開設しました。

▼参考:AI MOUNTAINEERING CLINIC

ーービジネスマンから医師を目指したのですね!きっかけはなんだったのでしょうか?
リーマンショックの影響としか言いようがないんですけれど……(笑)。あの時、マクロ経済が重大な打撃を受け社会で必要とされる常識や倫理感が丸ごとひっくり返りました。
 
その経験を経て、たとえ経済がひっくり返っても「ありがとう」を言われる価値が変わらない仕事に転職したいと考えたんです。
熟考した結果、少なくとも私が生きている間は安定してそうな業界、と考えた時に医療業界にたどり着き医師になりました。

ーーそうだったのですね。先生のタフさと強い意志を感じました。その上で、なぜ外科専門医でありながら内科の常勤医に転職したのですか?
最初は「どうせ遅れて医学部に入ったんだし、大変そうとかできないかもしれないとかは考えず、やりたいと思うことをやってみるか」ぐらいの気持ちで専攻を決めて、少し自宅からは遠かったけど外科専門医が取得できる病院に就職しました。実際に外科医としての生活はすごく楽しかったです。しかし、2年前に家庭の事情で子供と二人暮らしになり、そこからは完全にワンオペで子供を育てながら家事もやって、それで家から遠い病院の常勤外科医って、聞いただけで無理そうな生活を続けることになりました。

日々の長時間労働だけでなく外科は人数が少ないので当直も多いですし家の中がグチャグチャになりました。加えて、私が当直するたびに子供を実家に預けるので子供の生活も安定しませんでした。さすがにこれは状況を変えなきゃと思って、もう少し家のために時間が使えるようにと転職活動をして、昨年4月から今の病院で内科の常勤医として働き始めました。最初は今までメインで診たことのない内科疾患に苦しみましたが、いい先輩や同僚に支えられ、一通りの内科救急にも対応できるようになりました。外科専門医を維持するために週1回はオペに参加させていただいているので、“良いとこ取り”みたいな働き方ですね。
 
幸い楽しくやっていて、しかも病院が子供の学校から近いので、朝の通勤・通学は一緒にできますし、病院の休憩の時間に保護者面談とかにも行けちゃうんですよね。子供の生活が落ち着いたこと、子供との時間をちゃんと持てるようになったことから、成績がとても上がりました(笑)。今は、この生活を選んで良かったなと心から思っています。

ファストドクターからつながる「地域医療支援」

ーーファストドクターの非常勤医を始めたきっかけは何でしたか?
バイトは時間があったらやりたいとずっと思っていましたが、実際は忙しくてこれまでは医局派遣を月に1~2回とかその程度でした。本格的にバイトを始めたきっかけは、転職して生活が改められたことですね。バイト先について、いろいろ調べた中で、ファストドクターのバイトを見つけました。他にもWeb媒体を通じて検診バイトとか当直バイトとかいろいろやってみましたが、今も続けているのはファストドクターだけです。
 
継続できている理由は、予定が直前まで読めなくても、ファストドクターは「今日(明日)なら働ける!」と思ったタイミングですぐにLINEで応募できるからですね。シフトも4時間、5時間、6時間から選べるので、ワンオペ生活のすきま時間に働けます。さらにありがたいのは、始まる時間になるとドクターアテンダントと呼ばれるドライバーさんが家まで迎えに来てくれて、車で往診に回って自宅に帰るまで付き添ってくれるので、体力面の負担も少なく済みます。
 
普通のバイトだったらいくら時給が高くても、例えば千葉まで行くとなれば往復何時間もかけて移動しないといけないのに対し、ファストドクターは移動時間で無駄になる時間がほとんどないのもすごく良いなと思います。

ーーファストドクターでの勤務でやりがいを感じるのはどんな場面ですか?
ファストドクターはエリアで担当が分かれていますが、私の場合は自宅近くのエリアを担当することが多く、「身近な人のために働いている」「地域の一次救急を支えている」という実感を持ちやすいのがやりがいにつながっていると思います。
 
私は、生活、仕事、文化(レジャー)を同じ地域で完結させることができたら人生が豊かになると考えているのですが、都会だと難しいことも多いですよね。ファストドクターでの働き方は、愛する地元で、地元の方々のお役に立てて、理想に近い形を実現できているので、 結果的に続いているのだと思います。
 
往診に行くエリアが自分の住んでいる地域だと、土地勘があるので例えば自分では手に負えない状態だったら〇〇病院に紹介しようとか、今は落ち着いているから明日かかりつけに行ってもらおうとか、適切な医療機関へ連携できますし、どこか受診してね、と患者さんに言ったところで患者さんがどこに行っていいか分からないような場合は自分の勤務先に紹介しておいて、「明日、私が診るよ!」とすることもあります。

実際、往診で伺ったで初発の喘息発作の患者さんがいらっしゃって、この診察がきっかけで本当に外来に来てくれた患者さんがいて。こういった体験を積み重ねることができるのが、とても嬉しいですね。

ーー今、週に何回くらいファストドクターの勤務に入っていますか?
働き始めてちょうど1年ほど経ったところですが、少なくとも週1回は入ろうと思っていて、入れるときは週2回入ることもあります。普段の家事に加えて子供のお弁当作りがある日は朝4時半に起きなきゃいけないので、基本はお弁当がない土曜日の前夜、金曜日にシフトを入れることが多いです。あとは子供の定期テストの最終日などもお弁当がいらないので、気付いたタイミングで「あ、じゃあ今日勤務しようかな」とかなりフレキシブルに応募してます。
 
ファストドクターではオンライン診療もやっていて、私も資格は持っていますが、現場に出てばかりでまだオンライン医をやったことがありません。今後、子供がインフルエンザなどにかかって現場に出られなくなったときなどに活用できたらいいなと思っています。選択肢を増やしておくのは大事ですよね。

「先生が来てくれて良かった」と言われる安心感

ーー実際に働き始めて、働く前の印象とギャップはありましたか?
そうですね……。ファストドクターに限らずですが、救急往診は思っていた以上に“ホスピタリティが求められる”ということでしょうか。診察場所が自宅だと医療資材が限られるので、十分な検査ができないですし、出したいと思う薬が出せるというわけではありません。このように限界がある中で、ファストドクターを呼んでくれた患者さんに安心してもらわなきゃいけないんですよ。
 
往診では患者さんやご家族と話す中でそのニーズを拾い上げて、できる範囲で患者さんの希望を叶える努力をするというか、そういうコミュニケーションで安心を与えることが仕事になっている面もあります。その辺りが、十分な検査をして医学的に最適と思われる治療を行うという、日常の病院での診療との違いかなと思います。この1年間で、往診現場では在宅医療ならではのホスピタリティが求められるんだと学びました。

ーー仕事に慣れるまで、苦労したことや困ったことはどんなことですか?
往診では血液検査も画像検査もできないので、慣れるまでに1番困ったのは、例えば患者さんが「お腹が痛い」と言うときに、その場の訴えと身体所見だけで対応を判断しなければいけないことですね。状態によっては救急車を呼ぶ、紹介状を書いて近くの夜間救急外来にすぐに行ってもらうケースもあります。しかし、地元で働いているがゆえに、患者さんを引き継ぐ先は知り合いの先生の可能性もある。全然緊急じゃなかったら、大誤診していたら恥ずかしいですよね。それに、患者さんサイドとしても、せっかくファストドクターを呼んだのに対応しきれない上に、そこから救急外来に行って深夜まで病院で待った結果、それが誤診だったらもう大迷惑です。二次救急連携を判断するのには思い切りと勇気がいります。
 
だからこそ、「先生が来てくれてよかった」と言ってもらえると、すっごく安心するんです。ファストドクターには往診の翌日に患者さんのフィードバックが届くシステムがあるのですが、それを読んで自分が誤診でなくて患者さんにとっていいことができたかな、と実感できることもモチベーションが向上に繋がっていますね。

ーーどんな人がファストドクターに向いていると思いますか?
フィジカルアセスメントや患者さんとのコミュニケーションなど、検査診断専門的治療といった狭義の医療行為以上のことも率先してできる人、ファジーな中で適切な医療行為を選択することができる人が向いているのではないかと思います。あとは、ファストドクターでは子供の診察もあるので、小児診察が苦でない必要があります。お子さんを褒めたらお母さんもニコニコになりますし、安心させてあげられるような声掛けができたらいいですよね。
 
ファストドクターの経験と、それ以外の仕事の経験が良い方向に影響し合って、臨床能力の向上につながったら素晴らしいですよね。私の場合は、ファストドクターで子どもを診た経験が、常勤先の救急現場で小児を診る人が足りないときに役立った場面がありました。

必要な患者さんに必要な医療を提供するために

ーーファストドクターは地域医療に対してどのような存在だと思いますか?
救急現場でもファストドクターでも、家で寝ていれば治るレベルの患者さんが少なからずいらっしゃるのですが、患者さんからすると救急車を呼ぶ、病院を受診する判断基準が分からなくて不安なのだということも理解しています。しかし、そういう患者さんを一次救急で受け入れ、必要なら救急車を呼ぶような判断ができれば、二次救急や三次救急のリソースを本当に必要な患者さんに回せるはずなんですよね。ファストドクターが存在していることで、忙しい高次救急病院に駆け込むような人が減ってほしいなと思います。
 
また、ファストドクターはあくまでも応急処置を担うので、患者さんとは”一期一会”。継続して治療をさせていただくことはありません。かかりつけの先生方が患者さんにできるアプローチとは絶対的に違います。普段はクリニックや病院に通院している患者さんが、ちょっと別件で困った時はファストドクターのようなプラットフォームに頼るようになれば、忙しい勤務医の先生方の助けになるかもしれません。
 
ファストドクターができることがもっと地域の医療機関や患者さんに伝わっていけば、患者さんも適切な選択ができるでしょうし、地域医療の役割分担も進んで、ファストドクターが地域医療にとってよりハッピーな存在になれるかもしれないですよね。

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