【部長noteリレー】泥臭く、地道に。全員で過渡期を乗り越えていく
時間外救急から医療プラットフォームとして急成長を続けているファストドクター。その成長の裏には、現在は部長職やシニアマネージャーとなった人たちの数々の挑戦と成果によって実現したといっても過言ではありません。
ファストドクターのなかでも、エリア統括部は『各事業の根幹を担うチーム』として会社全体の医療リソース管理、提携医療機関との連携、救急往診現場の諸対応、医療資材の管理などプラットフォーム運営の最前線を走っています。
本記事ではエリア統括部部長である軍司広介さんに成長過程にあるスタートアップ企業で、どのように仕事と向き合い、どのように自分の役割を認識して壁を乗り越えてきたのかなどについて伺いました。
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新しい訪問診療を一緒に作り上げていける面白さ
ーー軍司さんは2019年にファストドクターに入社されて約4年経ちました。当時はどのようなことを思い描かれて入社したのでしょうか。
軍司:
元々は病院でリハビリを終えた人の社会復帰のためにトレーナーとして勤務するかたわら、総務の人手が足らずに医療資材の発注や納品、検品管理、経理、人事関係と幅広くバックオフィス業務を担当していました。訪問診療の立ち上げや介護施設の運営などの経験を経て、今度は自分の手で在宅医療や訪問看護のような「在宅」に関する医療サービスを展開したいと思っていた時期でした。そのタイミングで代表取締役の水野さんに出会い、ファストドクターの救急往診として一般の方に向けて救急の領域で在宅医療を提供するサービスがあることを知って強い興味を持ち、入社に至りました。私が知る限り当時は、初診での往診や単回での訪問診療などをやっているところは他になかったので、高齢化が進んで自力での通院困難性が高まっていく日本においては必要なサービスであろうと思いましたし、そこを一緒に作り上げていけるのは非常に面白そうだなと感じたのを覚えています。
ーー在宅に関する医療サービスを展開したいと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。
軍司:
これはどこも同じかもしれませんが、病院に勤務していたときに、やっぱり家に帰りたいけど帰れない高齢の患者さんがたくさんいたんです。そういう患者さんの希望を叶えて、家に帰してあげられるような在宅サービスがあったらいいのにと思っていました。たとえば、高齢の患者さんが家に帰るといってもさまざまなハードルがあって、日常生活を送る上で不可欠な介護保険の申請が必要だったり、身寄りがいない人は後見人をつけなければならなかったりします。そうした行政のサービスはさまざまありますが、なかなか手が回らない状況もあって手続きだけで数か月かかることもあったんです。病院としては治療も終わっているし、新しい患者さんも来るし、正直なところ早く退院してほしい…。だけど、無責任に退院させるわけにもいかないので、そう簡単にはいかない。そういう病院職員の心情や葛藤と、患者さんの実情を目の当たりにしていたので、もう少しどうにかならないかなと。自分が在宅に関する医療サービスを立ち上げて、体制を作っていきたいというのはずっと思っていたことでした。
ーー当時軍司さんが思い描いていたことは、現在実現できているのでしょうか。なにか目標にされていたことなどはありましたか。
軍司:
すべてではないですが、一定できていると思います。やるからにはファストドクターのサービスを、全国に広めたいなと思っていましたから。その上で、当時はエリアマネージャーとして入社したので、まずは東京で1つのクリニックと連携しているところから、全国展開をして大きく広げていきたいという気持ちがありました。現状(取材時2023年10月)ですと、ファストドクターの人口カバー率は約50%(自治体との連携も含む)なので、ファストドクターとして実現したいことも含めて少しずつ達成できているのではないかと思っています。
個人的には、現在同じく部長職である地域医療推進部の服部さんや法人事業部の小山さんがファストドクターに入ってきてくれたことも目標達成のための大きな存在となっています。事業が生活者向けや医療者向けなどと波及するまでは、すべてをエリア統括部のなかでやっていたので、それぞれの業務をリードし、スケールさせられる人材を採用したことによって、結果として各々事業化させるまで成長することができて嬉しく思っています。
ーーエリア統括部にとってのターニングポイントといえば、どんなことがありましたか。
軍司:
一番苦しかったのは、コロナ禍で医師がいない、薬がないという状況になったときでしょうか。これはファストドクターのみならず、日本全体で薬の流通が鈍化し、医師もコロナに罹患。救急往診を求める患者さんが多いなかでリソース・物資ともに不足していた時期がありました。「今日から○○がはじまるよ」「来週からは○○もだよ」と目まぐるしく状況が変わっていくなかで、同時並行して物や場所の準備、人の手配などをしていく必要があったので、調整する大変さ、苦しさもありました。第8波の時期は感染爆発が起こっていたので、特に苦しかったのですが、どうこの状況を打開していくのかとメンバー間で相談しあい、全員で協力してカバーしていって、なんとかなったというのが正直なところですね。その経験があったからこそ、エリア統括部としては常日頃の準備の大切さを実感し、世の中の動向を読んで先回りして行動する習慣ついたり、短期間で物や場所、人の準備がまわせるようになったりできたのではないかと思います。
日常生活のなかで見えることがすべて往診に直結してくる
ーー軍司さんの仕事観に関してお伺いします。軍司さん自身が大事にしている仕事との向き合い方、スタンスのようなものはありますか。
軍司:
「スタンス」とか「向き合い方」とか、そういうかっこいい話ではないのですが、生活の一部として溶け込んで働いていることでしょうか。これは誰にでも勧められることではありませんし、あまり手本にならないのですが、時間を問わず会社携帯を見て、データや状況を追いかけてしまうし、今日の状況ってどうだろうか、現場で何が起きているのだろうかなど、パソコンを開いて進捗確認をしてしまいます。本当に生活の一部として仕事をしている感覚ですね。そのため、体力的にも精神的にもしんどくはないんです(笑)。自分たちが作り上げてきたものでもありますし、自分たちがやったことの結果として裏付けされていくものがあるので、その裏付けがあっているのかを常に考えています。この裏付けとは、たとえば医師の数や時間の妥当性、救急往診の対応件数などですね。一方で、裏付けがあっていないと、患者さんの需要に対して供給しきれない苦しさももちろんあります。
救急往診の件数とひと口に言っても、1つひとつ積み上げていくにはさまざまな要素があります。エリア統括部の話でいえば大前提として医師やDA(ドクターアテンダント)がいなければならないし、医療資材の準備ができているか、医師とDAのシフトが組まれているかが重要です。また、救急往診全体としていえば、コールセンターの人員配置は問題ないか、電波障害はないか、なにか大きなイベントで交通に支障がないかなど、日常生活のなかで見えることがすべて救急往診に直結してくるわけです。これまでは、コロナ禍で感染拡大に伴ってそこに向けて一気にやらなければならないというような調整をしてきましたが、これからはそうはいきません。こうしたことも含めてしっかりと全体を見ていきながら仕事をするのには面白さがありますよね。ただし、これは決してひとりでやっていける仕事ではないです。部署のメンバーはもちろん、連携する部署の協力があってなせる技だと思います。
ーー往診事業本部の連携の強さや対応力は、本当にすごいなとコーポレート側から見ていて思っています。今の軍司さんを作り上げたものとして、これはものすごく勉強した、苦労したというもののなかにはどんなことがありますか。
軍司:
コンサルティングやマーケティングに関する勉強はそのひとつですね。正直、今まで経験したこともなかったので、そもそも使っている用語がわからないところからのスタートでした。それでも、2019年の入社当時は社員10人以下の超スタートアップだったので、リスティング広告に関することなど、未経験かつ領域外でも担当しなければならない時期がありました。そのため、そもそもリスティング広告ってどんなものなのかを調べて、うまく活用していくための勉強をして、競合他社の様子をみながら分析をして細かな調整をしていったりと、かなり深く学びました。
このように自分の知らないことって本当にたくさんありますし、特にスタートアップのように成長過程にある会社では積極的に自分で学んで、いかに学んだものを自部署のメンバーにシェアして落とし込んでいくか。そして、いろんな部署と連携を図っていくことが大事だなと思います。これは今でも自分自身が続けていることですし、周りの人も同じようにやっていってほしいと思います。それから、入社当時と比べると会社の人数だけが急激に増えていって、大きな組織になったのは事実ですが、実はまだまだ立派な会社ではないので全員で過渡期を乗り越えていっている段階だと思います。やっていることは泥臭いことばかりなので、よくありがちなワードですが「日々精進を重ねていく」というマインドも忘れずに過ごしたいですね。
気合いと根性から脱却し、社内DXで業務効率を加速
ーーエリア統括部はこれからどんなことに力を入れていくところでしょうか。
軍司:
往診事業本部としては医師の業務効率を高めていくことや、しっかりと部内の全員が事業に関わるデータを理解し、活用していけるような体制を作っていって規模を拡大していきたいというのが第1目標です。あとは、物流拠点として卸売業との連携を取ったり、新しく立ち上がる新規事業サービスに対して供給型として準備ができるようしっかりとサポートして、コミットしていかなければならないと思っています。エリアマネージャーとしては、顧客のチャーンリスクがあがらないようなコミュニケーション体制を取っていくことも大事ですね。とにかく管掌範囲が広いので、課題はたくさんあります。
ーー軍司さん個人としてはどんなことを意識してやっていこうと思っていますか。
軍司:
これまでは正直なところ、社員の人数も少なかったので気合いと根性で乗り越えてきた部分もあります。ただ、人数も増えてきて会社として大きくなってきた今、FDT(ファストドクターテクノロジーズ)との連携を強化して、より効率的に業務を行えるように社内DXも取り入れながら規模を拡大していきたいというのはあります。人数が増えてくると、ひとりで頑張っても会社にとって何が変わるのかといったら、そんなに変わらないように思えるかもしれません。だけど、そのひとりの頑張りは絶対に数字には表れてくるし、必ず評価してくれる人もいます。部長としてはそういう人をちゃんと見て、伸ばしてあげられるような体制を整えていかなければなりません。また、自分ひとりができるような仕事をできるだけ作らないように、属人化しないようにとは思っていますね。