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医師インタビュー「疲弊していた急性期医療の現状から、ファストドクターで得た生きがいのひとつとなる体験」

ファストドクターには会社でプラットフォームを運営する本社メンバーと、救急往診の現場で働く医療者メンバーがいます。

今までは本社メンバーの紹介が多かったのですが、今後は医療者にもフォーカスを当て、ファストドクター全体としてどんな人が、どんな思いを持って働いているのか、をご紹介していこうと思っています。

本社メンバーだけではなく、医療者側にも多様な働き方があり、「ファストドクターを支える一翼」になっていることが伝わると嬉しいです。

医師インタビュー初となる今回は、吉川先生によるインタビューです。

ぜひ、ご覧ください。

吉川 隆広医師
年齢:30代前半
ファストドクター勤務歴:2年
勤務エリア:主に東京、千葉

※取材内容は2022年11月時点のものです。

①現在の働き方

ー吉川先生の現在の働き方についてお伺いしたいです。
現在は都内の市中病院で勤務しながら、平日の勤務時間外である夜間や土日祝日の日中などに、ファストドクターの救急往診に携わらせてもらっています。シフトの頻度としては、月に10回ほどです。

市中病院では、腎臓内科で外来・入院患者さんの診療を主に行っています。専門領域としては、慢性腎臓病や急性腎障害、膠原病などの自己免疫性疾患、感染症など、腎臓内科特有の患者さんを中心に診ていますが、高齢者診療を行う頻度も高い領域です。もちろん、血液透析をしている外来・入院患者さんの管理も大きな仕事です。

②ファストドクターで働くきっかけ

ーファストドクターで働くきっかけについて、どのような経緯で応募されたのでしょうか。

2020年の年末ごろだったかと思います。当時は今とは違う、大学病院の医局に関連する市中病院に勤めていました。そこでは急性期診療に携わっていましたが、高齢の患者さんの割合が多く、入院を繰り返すなかで疲れ切っているご家族と接したり、患者さんとぶつかったりすることもありました。もちろん使命感を持って仕事をしていましたが、なかなか社会的意義を見いだせない葛藤を感じる場面もあり、現代の急性期医療の負の部分に私自身が疲れを感じ始めていた時期でした。そうしたときに、年末年始の空いている時間を使って、何か自分が働ける場所がないかなと考えたのがきっかけです。たまたまファストドクターの求人が目に留まり、応募しました。

最初の往診は、大晦日からお正月にかけてだったので、今でも鮮明に覚えています。勤務サポーターの方とアテンドさんと3人で往診に出て、年末年始でなかなか医療機関へのアクセスが難しい時期に、自宅で体調が悪くなってしまった人の対応を初めてしたわけです。これが、すごく自分のなかでは充実した診療ができて、感謝もされて、やりがいを感じることができました。自分に合っているんじゃないかと、最初と2回目の勤務で強く感じました。もちろん、本業の仕事も重要視しています。それでも、少し大げさかもしれませんが、ファストドクターでの勤務は、私にとって生きがいのひとつのように感じています。

③ファストドクターで働いてみて

ーファストドクターで働かれて約2年、実際に働いてみていかがですか。

今は基本的に内科疾患の患者さんを多く診ていますね。最近では、圧倒的に新型コロナウイルス感染症の患者さんが多いです。ときどき、小児疾患の患者さんを診ることもあり、これまで触れる機会が多くはなかったので、自分で勉強し直すなどしています。

病院で診療していると、「この患者さんはどういう生活をしているのか」と、想像力にも限界がありますよね。しかし、ファストドクターで実際に患者さんの家に行くようになり、いろんな患者さんの生活を間近でみることで、こういう生活をしている人がいるんだと患者さんそれぞれの多様性を知ることができました。そして、病院での診療でも、それぞれの患者さんの生活を想像して診療をすることができるようになり、自分のスキルがひとつ向上したように思います。

もちろん仕事なので、お金のために働くところもありますが、空き時間で好きな時間に、さらには当日に勤務することもでき、時間を有効に使えるようになったことは大きいです。

ー働く前と働いた後で、ギャップのようなものはありましたか。
良いギャップとしては、柔軟性に富んでいる点でしょうか。一般的な医療機関だと、例えば電子カルテやシステム的なところで問題があるとしても、それを改善させるためには、いろんなステップを踏んでいかないといけませんよね。簡単に動かせるようなものじゃないという認識がありました。しかし、ファストドクターは医療系スタートアップならではな部分もあり、自社開発のシステムもすぐに改善されて、業務の流れもどんどん良い方向に変わっていくような仕組みがあります。この辺りは、働くまではあまり想像していなかった部分です。一方で、仕組みが変わっていくので、多少なりとも慣れる大変さはあると思います。

④実際の往診場面でのエピソード

ー吉川先生が一番印象に残っている場面などはありますか。

診療後のアンケートで一つひとつフィードバックをもらえるので、一番印象に残っているというのは難しいですね。フィードバックでは、「すごく丁寧に診察をしてくれて、わかりやすくて助かりました」とポジティブなコメントをもらえることが多いので。そのなかでも、やっぱり印象的なのは先ほどもお話した、最初の往診でしょうか。大晦日だったので、玄関先で「年が明けますね…」なんて言いながらPCR検査をしていましたから。あとは、3回目くらいの勤務のときに、お子さんの診察をしたんですが、親族が総出でお子さんの様子を見守っていて、すごく大切にされているのが伝わってきました。自分の診療に期待してくれている嬉しい気持ちと、同時にすごく緊張感のあるなかで襟を正すような気持ちで、あらためて診療に対して向き合うきっかけにはなりましたね。

ーこれは大事に至らなくてよかったというエピソードはありますか。

新型コロナウイルス感染症の第5波においては、呼吸困難を訴える患者さんが多く、なかでも重症化リスクの高い患者さんや中等症の患者さんの救急搬送を連日した時期もありました。また、急激な腹痛で我慢して様子を見ようとしていた患者さんが、診察で虫垂炎の可能性が高く、そのまま救急搬送で手術となったこともありました。その後、軽快したと診療情報提供書の返書をもらったときには、よかったと思いましたね。ただ、ファストドクターはあくまでも往診なので、身体診察や一部の検査と処置など、その場でできる診療内容は限られています。正確な診断をそこでつけることよりも、我々にできるのは緊急性があるかどうかをまず判断することなので、そこをちゃんと判断できたときは、本当によかったと思います。

⑤ファストドクターで働くのに向いている人とは

まずは空き時間を有効に使って、労働の対価を得たい人にとっては働きやすいと思います。患者さんと直に接することができるので、社会的な意義ややりがいの面でも、コミュニケーションを取るのが好きな先生は楽しいと感じるでしょう。あとは、普段の診療業務で少しマンネリを感じているような人、いろんな患者さんがいるので、さまざまな生活をみれるという点では、診療の幅も広がりとても刺激になるかもしれません。

ファストドクターで働いたことがある医師からは、慣れない往診がけっこう大変だったという声もありますが、私としては忙しい時期には当日の希望手当がついたり、トリアージを行うコンサル医やオンライン診療という違った形態での勤務内容もあったりして、ちゃんと労働対価が得られていると実感しています。

とにかく、一回やってみてほしいというのはありますね。往診も何度かしていくなかで、自分のやり方が確立されていき、肩ひじ張らずに少し気が楽になってくると思います。私はファストドクターですごく楽しんで働けています。

吉川先生、インタビューに応じてくださりありがとうございました!

文・白石 弓夏