【公共政策部長インタビュー第2弾】掲げるビジョン実現への「道筋」をつくる開拓者
ファストドクターが掲げるビジョン2030「1億人のかかりつけ機能を担う」を推進していくには、事業の拡大だけではなく、現行の法規制の整理や規制緩和を含めた改善案に関する提言も必要になってきます。政界や官公庁などになぜこのような対応が必要なのかを丁寧に説明し、理解を求め、道筋をつくるのが新設する公共政策部です。その責務を託された福島直央部長に、これまでのキャリアやファストドクターへの参画理由、公共政策部の仕事の面白みなどについて伺いました。
▼公共政策部 福島部長によるインタビュー第1弾はこちら
LINEで行政・防災DXを推進、新型コロナ対応の中心的存在
━━福島さんのこれまでの経歴から教えていただけますか。
福島:
学生時代は一橋大学法学部から大学院社会学研究科に進んで、主に著作権法やインターネットガバナンスを対象として研究をしていました。修士を終えて研究分野に近い仕事をしようと思って就職したのが株式会社三菱総合研究所です。
ここでは総務省や経済産業省を中心に主には官公庁関連の業務を担当しました。働き始めた2005年はインターネットが一般に普及していこうとしている時代でしたので、情報通信に関する法規制の調査研究や提言に関する業務が多くありました。その中でも情報通信に関するビジネスを進めるために必要となる法規制の整備や、消費者保護に関する法規制等を主に担当していました。
いろいろな法規制・実証事業に携わりましたが、法規制や実証事業はユーザーから余り近くないのでそれによってどれだけ社会が変わったのかという実感をなかなか得にくかったということがあります。そのため、自分が関わることで変化が感じられる仕事がしたいと思い、コンサルティング会社の有限責任監査法人トーマツに転職しました。ここで取り組んだのは農業・漁業のコンサルティングです。農業でのドローン活用や植物工場等の農業ICTが流行り始めたころだったのでそうした事業や、魚の流通に関するコンサルティングをしておりました。
ただ、トーマツで腰を据えて働こうと思っていた矢先に、三菱総研時代から付き合いのあったLINE株式会社の知人から「来ないか?」とオファーが来たんですね。正直なところ転職から半年しかたってませんでしたので悩みましたが、事業会社に行けるというチャンスは来たときに掴まないとなくなるだろうし、彼と一緒に仕事をするのは楽しそうだということで、先延ばしせずLINEに移りました。
━━2018年3月にLINEに入社されて、公共政策室に所属されたそうですね。
福島:
はい、当初は官公庁・自治体の政策渉外担当として、役所の窓口業務をどうデジタル化していくかといった行政DXに関する事例作り等に取り組みました。LINEで行政手続きをできるようにしたり、LINE Payを行政窓口で使えるようにしたり、その施策づくりと実施に向けた協定締結に関わりました。そのDX化を防災領域に広げていって、2018年末から今はSOCDAと呼ばれている情報収集用の防災チャットボットや、2019年に関東などで甚大な被害をもたらした台風15号・19号の際にはLINEのチャットボットを使った市民向けのFAQチャットボットの提供等を担当しています。
私が医療分野に関わるようになったのは新型コロナウイルスです。感染が最初に広がった中国・武漢市で封鎖騒ぎが出たとき、厚生労働省の相談窓口に問い合わせが殺到しました。その情報を知って、防災用に作ったLINEのチャットボットの仕組みが、コロナ対応に活かせるのではないかということで厚労省に提案して採用されています。
それが採用された翌日、今度は厚生労働省の知人から、横浜港に到着したクルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号内の乗客支援が何かできないかという要請がありました。相談の上で乗船者と接触をできる限り少なくした上で、乗客が必要とする薬の提供や医師による健康相談、動画による情報提供等を、乗客に貸与した2000台のiPhoneのLINE上で可能にするシステムを1週間弱で提供可能にしています。この際は私も数日に渡って乗船して船長に取組の説明をしたり、DMAT/DPATの方に利用方法を説明したりしています。
新型コロナという感染症の正体がまだよくわからないときに、現場にいたDMATメンバーの医療関係の方々や厚労省の職員の方々と必死になって取り組んだ日々が、医療に本格的に関わるきっかけになりました。
その後もLINEユーザーを対象に発熱状況などを問う厚労省のコロナ対策全国調査やワクチン接種予約システムの企画、実施にも主要メンバーとして関わっています。
ビジョンとすごく面白い経営陣に魅力を感じて入社
━━そうした大変な経験をされ、公共政策室長として活躍されたLINEを辞めて、どうしてファストドクターに転職しようと思われたのですか。
福島:
LINEはすごく良い会社で、やれることはまだたくさんありました。最近はサステナビリティ関連の仕事とかも色々やっていましたしね。
ただ、一方でプラットフォームが巨大になったために、ユーザーとの接点としてできることに限界も感じていました。例えば、行政や防災対応において、こういう機能を付加した方が良いと思っても、LINE本体を改修することにはなかなかつながりません。一つの機能付加がユーザー全体に影響してしまい、他のユーザーには改悪になることもあるからです。私が説得しきれなかっただけとも言えますけどね。
私が取り組んでみたいことの実現に難しさを感じていたときにファストドクターの採用情報を知り、「生活者の不安と医療者の負担をなくす」というビジョンにまず気持ちが惹かれました。
行政と仕事をしていると、「市民が便利なように」という言葉をよく聞くのですが、私は市民も行政担当者も両方が楽になる社会にならないと意味がないとずっと思っています。市民が楽になっても行政担当者の作業量が倍になった、では持続可能ではないですよね。今後人口減少に応じて行政職員も減っていきますので。
そのため、市民(生活者)と医療者双方に言及したビジョンにすごく共感できたんです。2024年から始まる医師の働き方改革においても”医療者の負担軽減”は最重要なテーマだと思っていました。
サービス面では、生活者個人個人の課題を、医療・ヘルスケアという観点で具体的に改善をしていく、そのために往診とオンライン診療を組み合わせて展開しようとしていることも魅力的でした。オンライン診療だけを展開するのでは生活者のニーズは満たせないと思っていたこともありまして、このサービスが広がることによる良さが私の中で具体的に見えたこともあります。
そして、決め手としてこちらの方が大きいのは、面接で4人の経営陣の方と全員お話をしたのですが、この方たちと話をするのがとても面白かったことです。忙しい中、何度も時間を割いていただいて光栄に思っていますが、私のなかでどんな人たちと働くかはとても重要です。トーマツへの転職の時も、LINEへの転職の時も、この人たちと働くなら面白そうだというのが大きくありました。
今回もこの人たちと仕事をしたら絶対面白そうだと思い、そしてこの人たちとビジョンの実現に関わりたいと思ったことが大きな決め手となっています。
━━福島さんの日頃からの思いがファストドクターへ導いてくださったのですね。福島さんは、公共政策部の部長として、どのような部門長を目指していますか。
福島:
公共政策部で働く皆さんが自分の成果を上げたと言える場にしたいと思っています。
ここで一緒に働いた人には、私はファストドクターの公共政策部でこの仕事をやりましたと、実績をしっかりと言葉にできる人になってほしいと思っています。そのためにはできるだけ裁量権を与え、権限移譲を図ることを考えています。
トラブルが起きたときの責任は部門長である私が負いますが、実務の責任はそれぞれが持つことで、自分の仕事としての実感とそれを達成する経験が積める環境にしたいと思います。
一方で目標と情報の共有はきちんとしていきたいと思っています。例えば自分が病気になった、子どもが病気になったなどで急遽休みたいということがありますが、その時に目標の共有と情報の共有がなされていれば、私や他の人が引き継いで仕事を継続して行うことができます。
個人に裁量を与えつつも、何かあったときのバックアップもできるような仕組みを作るのが私の仕事だと思っています。
フランクに話せる仲間感覚の組織にしたい
━━部署のカルチャーとしては、どんな部署にしていきたいですか。
福島:
フランクに話せる仲間感覚の組織でありたいと思っています。私たちGRの仕事は人間関係や情報のやり取りが大きな比重を占める仕事になるので、部内で気軽に情報を交換し、共有できる関係性が重要です。
最近の若い方ーーというと自分が年寄りになったようで嫌なのですがーーは嫌がるかもしれませんが、多少ランチ会とか飲み会とかも開いて、風通しの良い雰囲気づくりはしていきたいと思います。
━━これから新メンバーを迎えます。新たな仲間とチャレンジしたいことを最後に教えてください。
福島:
ファストドクターは「1億人のかかりつけ機能を担う」ということを「ビジョン2030」で掲げています。新たな医療の社会インフラになることを目指しているファストドクターのビジョンを実現することが、私たちのミッションであり、チャレンジです。
今見えている課題を解決することだけでなく、事業領域が広がれば、さらにいろいろな課題が出てくると思いますのでそこへも対応が必要です。色々な手段を用いてビジョン達成への道筋をつくっていく。大変ですがやりがいのあるこの仕事に、ともにチャレンジしたいという仲間にぜひ来てほしいと思います。
文:斉藤 泰生
撮影場所:WeWork 東京ポートシティ竹芝