見出し画像

現場に根付くことが患者さんの喜びにつながる。ファストドクター取締役の仕事のスタンスとは

夜間往診プラットフォームを提供する「Fast DOCTOR(ファストドクター)」 の創業メンバーであり、現場オペレーションを管轄する小石祐司さん。長らくマーケティング責任者を兼務していましたが、事業拡大のため、新たにCMOを募集することにしました。

今回は小石さんから、ファストドクターを立ち上げた経緯や仕事において大事にしていること、CMOに求める仕事観についてお話を伺いました。

小石 祐司|ファストドクター株式会社取締役
香川県出身。近畿大学経済学部卒業後、2007年に株式会社オプトに入社。ECサイトの新規立ち上げ支援を担当。株式会社マクロミルにてCRM新規事業部を経て、2016年にファストドクターを創業。リアルオペレーション部門とマーケ部門を管掌。


認知よりも、事業を磨くことが患者さんのためになる

ーーまずは、小石さんが代表取締役・医師の菊池さんとともに創業した背景について教えてください。

菊池さんとは、共通の知人を通して出会いました。
まずは友人として意気投合し、様々な話の中で2015年に菊池さんから、救急現場の課題、そしてファストドクターの構想を聞きました。菊池さんから「往診という文化をつくりたい」という強い想いを聞いて、自分が助けになりたいと感じましたね。

一方で、どうやって世の中にプロダクトを普及させていくかが課題だと感じました。いかに菊池さんが崇高なビジョンを掲げていて、よりよいプロダクトが生まれても、それが人々に知られていなければ何の意味もありません。幸い私には、オプトやマクロミルでマーケティングの最前線にいた経験があります。認知を広めるという点で、自分の力が活かせるのではと思い、創業メンバーとして加わりました。

ーー創業後はどのように認知を広めたのでしょうか?

当初、自分のミッションは社会の認知を取ることだと考えていました。しかし事業を進めるうちに、認知だけでは意味がないことに気づいたのです。

ファストドクターが目指すのは、「文化」をつくること。そのためにはまず、表面上の広告やマーケティングだけでなく、事業の根幹を整えて、愛されるプロダクトをつくることが不可欠です。自分がまず注力すべきは、プロダクトをよりよくすることだと考えました。

ーーまずはプロダクトの磨き上げに注力されたんですね。プロダクトの重要さに気づいたきっかけは何だったのでしょうか?

現場に出たことです。実際に現場を見ると、必要な書類がなかったり、薬が足りなかったりなど、さまざまな課題が発生していました。医師やスタッフが焦ったり不安な様子だったら、患者さんはなおさら不安になります。まずは体制を整えて、患者さんの価値を最大化させることに注力すべきだと感じましたね。

現場を知ることで、リアルな目線で課題を解決

ーー現場に出たことで、意識が変わったのですね。具体的にはどのようにプロダクトの磨き上げを進めていったのですか?

まず、医師サポートチームを立ち上げました。医師がはじめてファストドクターとして往診に行く際、同席します。医師にとってもはじめての往診は不安ですし、複雑なオペレーションフローを覚えるのは簡単ではありません。医師の緊張に寄り添いながら、フローを教えていきました。

何度か既存の医師に同席したときのこと、人によって習熟度に差があるように感じました。次になにをするべきかがわからず、「えっと・・・」「あ~」などの独り言が聞こえてきたんです。私には、患者さんがその言葉に対して敏感に反応し、不安になっているように見えました。このままでは患者さんの満足度が下がってしまうかもしれない。
そう考えた私は、医師用のオペレーションの教科書を作成しました。訪問から会計まで、絵本のような形でわかりやすく示したものです。これによって次に何をしていいかわからないという医師の不安が解消しました。その結果、患者さんの満足度も向上しました。現場に通って、何十人もの医師の往診を見てきたからこそ、できたことだと感じています。

ほかにも、現場に通ったから気づいたことがあります。たとえば、先生のカルテ記入。ファストドクターの往診に適した形になっており、カルテはスマホから音声で入力します。システムを開発する際は、明るい部屋でスマホ画面を確認しますが、実際に医師がカルテを書くのは、夜中でしかも車の中です。夜の車内は暗い・狭い・揺れると社内の開発環境とは全く状況が異なります。
本来なら1ページ内で表示した方がいいけれど、あえて2ページにわけて、文字やアイコンの視認性をあげて医師が使いやすいUI/UXに改良をしました。結果として文字を読みやすくすることで、押しまちがいや入力漏れなどのミスを大幅に少なくすることにつながりました。これもずっと昼間に会議室で話していては気づかなかったと思います。常に現場に通って検証をし続けることの大切さを実感しました。

ーー現場を大事にしている小石さんの姿勢が伝わってきます・・・!

つくったものを現場で検証するのは、喜びでもあるんです。自分が生み出したものを使っている人に、「良かったよ」という感想を直接もらえる。大きなやりがいを感じますね。

文字の大きさでいうともう一つ事例があります。戸田駅にポスターを掲示する機会を得ました。まずは広報部の田島さんとともに駅を実際に訪問したことがありました。利用している人たちの様子を見て、「じゃあ私は、さっきの40代くらいのサラリーマン役をするね」と行動を10パターンほど真似しました。その人たちの目線を体感して、どのくらいの文字の大きさだと伝わるかを検討するためです。その結果、完成したのがこのポスターです。文字を大きくして、伝えたいメッセージだけをシンプルに伝える内容としました。このように往診時の患者さんのご自宅でも車中でも駅でも全ての課題と解決策は現場にあると思っています。

無題のプレゼンテーション (3)

患者さんに心から向き合える方、募集中!

ーー現在、PdMを募集中です。小石さんがPdMに求めることを教えてください。

ファストドクターでは「患者さん」のためを第一に考えている人を求めています。プロダクトを大事にして、患者さんに心から向き合えることが一番の条件です。

一見、医師のための教科書をつくったり、システムをつくったりするのは、患者さんに価値を届けるために遠回りに見えるかもしれません。しかし1対1を大事にすることが、最終的に1対Nに響くサービスへとつながると感じます。プロダクトに磨き続けられる人にぜひジョインしていただきたいですね。

ファストドクターが目指すのは、「往診」という文化を日本に根付かせることです。インフラや文化を創るためには、1人の力だけでは足りません。私だって、あくまで1ピースしか過ぎないのです。文化を創るために必要不可欠な1ピースとなってくださる方をお待ちしています。