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医師インタビュー「ファストドクターでのノウハウを本業へ取り入れ、院内DXや医師としての質向上へ繋げる」

救急往診現場で働く医師へのインタビュー記事"第3弾"は、神経内科医の部長として市中病院で活躍する吉井先生へのインタビューです。吉井先生は、2020年4月の新型コロナウィルスが流行し始めた頃からファストドクターの医療提供に貢献してくださっています。
ぜひ、ご覧ください。

吉井 康裕先生
年齢:40代後半
ファストドクター勤務歴:3年
勤務エリア:東京など

※取材内容は2023年2月時点のものです。

①ファストドクターで働き始めたきっかけ

-ー最初は吉井先生の現在の働き方についてお伺いしたいです。
現在は神奈川県にある日本鋼管病院の神経内科医として働いています。当直を院内にて週1回、他院で週1回行っていて、診療科を越えて患者さんを診ることが多いですね。医師となって1年目に横須賀米海軍病院で勤務していたとき、全ての診療科を担当できるように小児科・整形外科・救急外来・外科などでみっちりと経験したことが現在にも活きています。
ファストドクターへは当直のない日に、週に2回ほど勤務しています。

-ーファストドクターに応募したきっかけは何でしょうか?
コロナの影響でトレイルランニングの大会が中止になり、空いた時間で新しい往診の仕事にチャレンジすることにしたのがきっかけです。当時の僕は色々なところでバイトしていたので、そのひとつとしてフラっとやってみたという感じです。2020年の4月からになりますね。新型コロナウィルスが流行しはじめた頃で、ドキドキしながら働いていた記憶があります。在宅医療は、訪問診療や施設往診の経験はありましたが、急性期の往診というのはそもそもあまりないので初めてでした。

-ー急性期と慢性期、両方経験してみて何か感じたことありますか。
往診と一言で言っても、全く違いますね。
往診で多くの方がイメージするのは慢性期患者さんの訪問診療だと思うのですが、その場合には担当する患者さんは決まっていて、状態も基本的に変わらなくて、カルテの記載も多くがコピー&ペースト程度で済むのではないかという状況なんですよね。もちろん、患者さんの状態が変わることや医療的な処置が変わることもありますが、やはり落ち着いた状態の方が多いです。いつものお家に行って、いつもの会話をするということが少なくない。
でも、ファストドクターの救急往診では「はじめまして」からはじまって、これまでの状況について全く知らない患者さんの情報をゼロから取っていくわけです。話を聞きながら、治療していくことは、救急外来に近い感じがしますね。

②ファストドクターで働いてみて

-ーファストドクターで働きはじめてから、新しい発見や本業での臨床に活かせることはありましたか?
色々とありますよ。
まず、接遇をすごく気にするようになりましたね。というのも、僕は本業の市中病院で患者サービス向上委員会というものに参加していて、患者さんが何を考えているのか、医師にどのような評価をしているのか、などを調べています。ファストドクターで勤務をすると、患者さんから毎日フィードバックが送られてきて、その感謝の声を見るとすごく励みになりますし、その声をもらうために満足度の高い診察をしようと心がけるようになります。このフィードバックシステムを病院へ取り入れ、患者さんがスマートフォンでQRコードを読み取って、アンケートに回答するという仕組みを作ったりもしています。なので、患者さんへの接し方はもちろん、どうすれば患者満足度をあげることができるのか等を考えることは多いです。

また、ファストドクターでは、待ち時間が長く生じてしまうことがあっても、限られた診療時間のなかで、どういう風にすれば目の前の患者さんが満足度を高めて、幸せになってくれるかを普段よりも考えて実践するようになってきています。そして、普段の仕事もファストドクターモードで行っていると、「良い先生」という評価をいただけているように感じています。

-ー「病院」に還元するという視点で活かしてくださってるのがすごく嬉しいです。
ファストドクターのサービスからはたくさん学んでいますね。他にも、ファストドクターでの情報共有はLINEワークスを使っていますが、院内でも似たような感じでLINEを使った内科の連絡網を作って、情報共有の場として活用しています。それによって無駄な会議を減らすことに繋がっているんです。LINEで見た方が早いし、わざわざ集まる必要もありません。つまり、ファストドクターを”院内DX化”の参考にしています。ファストドクターでの仕事が病院勤務での質向上に繋がっていますよ。

-ー逆に、ファストドクターに入ってみて大変だったことや驚いたことはありますか?
最初は薬をパチパチとハサミで切って手渡していたので、処方日数をミスしないように慎重にやっていましたね。でも、あれのお陰で薬の数え方がうまくなりました(笑)

患者さんから「今、この薬余ってるんですけど…」と残薬を渡されることがあるのですが、その際に効率的に数えられるようになったのはファストドクターのおかげです。そして、薬剤師さんの苦労もちょっと分かるようになりました。ミスできないプレッシャーみたいなものですかね。現在では個包装されるようになり、パッケージ化されてそのまま処方薬を渡すだけになっているのでこのようなことを行う必要がなく、とても簡略化されましたが。

そもそも、人間はミスする生き物ですよね。ファストドクターの救急往診現場では処方薬や検査結果を毎回写真を撮って確認するようになっていますが、あれによってミスを防げているところはあると思います。指差し確認的な感じで自分で2重チェックするような。病院ではミスがあっても周りがカバーしてくれますが、往診現場でワンオペになるとそうもいかないです。なので、ミスが生じないようにいつも以上に慎重になりますし、そこから普段の生活や臨床でもより慎重な行動をするような習慣に結びついています。

-ー初回の勤務では不安はなかったですか?
もちろん不安はありましたけど、医師サポーターが入ってくれたので安心できました。医師サポーターとは、初回勤務から3回目の勤務時まで往診時に伴走してくれるスペシャリストのことで業務内容のレクチャーから患者さんへの声の掛け方まで丁寧に教えてくれる方のことです。
たまたま創業者の小石さんがついてきてくれたこともあり、いい意味で衝撃を受けましたね。
というのも、病院もビジネス的な側面があるので、利益を追求してしまう部分もあって、私も立場上経営視点で考えがちなんです。でも、小石さんに「売り上げを考えなくていい。患者さんが満足する方向で診てくれたらいい」と言われ、患者さんの治療に集中でき、ファストドクターでの勤務がとてもやりやすくなりました。
詰まるところ、患者満足度は利益追求にも繋がるはずですが、なかなかそのように医師に伝えることは出来ないものですよね。ファストドクターが目指す医療の在り方を強く感じましたね。

③若い医師がジェネラリストになる場、経験ある医師が社会貢献する場として

-ー最後の質問ですが、 ファストドクターでの勤務をどんな医師にオススメしたいですか?
若くてやる気のある先生ですね。ファストドクターに参画することは、診療の幅を広げるのにすごくいいと思います。若い先生って、プライマリケアに代表されるような、広く浅く対応をする環境に乏しかったりするんですよ。自分の専門ばっかりになってしまうと広く学べなかったりするものですが、ファストドクターの現場では、患者さんの全身を診れるようになる期待感があります。つまり、東京でもジェネラリストになれる環境があるという感覚なんですよね。僕が考えるジェネラリストって、田舎なんです。本当に何にもないオーストラリアの片田舎でレントゲンしかない、問診と身体所見で方針決定をしていくのが本当のプライマリケア。すぐ検査に頼るのではなくて、話をちゃんと聞いて次の治療方針を決める。でも、別に田舎に行かなくても、ファストドクターに入れば、まさにその環境が得られるから経験を積むという意味でとても有意義なものだと思います。

-ー逆に、経験のある医師にはどうですか?
僕ぐらいの年齢の人には、社会貢献性を感じられると思います。そもそも、医師ってそれがあるのかなって思ってて。ファストドクターで勤務をすることによって、救急隊の苦労とかわかるじゃないですか。それを知りながら仕事すると普段からあんまり救急を断らなくなると思いますね。あと、実際、現場で患者さんが酸素を吸いながら入院を待っているつらい状況とか…リアルな現場もわかるし。そういう患者さんのペインって、やっぱりひとつの病院だけで勤務しちゃうと忘れてきちゃうところなんですよ。経験のある先生は、ご自身の持っている技術と知識を社会に還元すべきだと思うから、「社会貢献」といった視点から行うと仕事の幅も深みも出て、楽しいんじゃないかな。
僕はファストドクターからお金以上のものを得ていると思ってるから。ファストドクターが日々良くしよう、右肩上がりにしようとしている方向性からは、勉強になると思ってますね。

文/喜多 一馬



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