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教育×Techでプロダクト開発を成功させたエンジニアが、医療×Tech企業に転職したワケ/ファストドクターのエンジニア組織(1/4)

ファストドクター事業をテクノロジーの側面から担うエンジニア組織。事業の成長に伴い、採用を強化し、組織を拡大していきます。そこで、エンジニア組織の今とこれからについて、技術開発部長として組織づくりに取り組む宮田芳郎さんに伺いました。4回に分けてお届けします。

宮田芳郎|ファストドクター株式会社 技術開発部長
私立開成高校、東京工業大学情報系学科大学院卒。製造業系のコンサルティング会社インクスに入社しソフトウェアエンジニアの経験を積む。2009年にインクスの同期4人で株式会社ガラパゴスを創業。 Qubena小中5教科の開発責任者を経て、2021年12月、ファストドクター株式会社に技術開発部長として入社



教育のスーパーエンジニアから医療分野へ

──まずは、宮田さんがファストドクターに転職するまでのキャリアについて教えてください。

製造業系のコンサルティング会社にソフトウェアエンジニアとして3年ほど勤務した後、同期と株式会社ガラパゴスというWebサイト・アプリ開発の会社を立ち上げ、役員を7年ほど務め、エンジニア組織をゼロから構築しました。

その後、教育分野に特化した開発をしたくて、自分で教育系アプリやAIを活用した機能を開発する会社を立ち上げました。そのときの取引先の1つ、株式会社COMPASSさんとの開発案件が自分の技術にすごくフィットしていて、最後まで見届けたくて転職することに。Chief AI Officerというポジションで入社し、その後開発責任者としてAI型教材Qubena(キュビナ)の学校向け5教科対応版を2021年4月にリリースしました。

当時私は、いずれやってくる「人類を超える機械ができる時代」に向けて、人を育てるプロダクトやサービスをつくることを人生のミッションにしていました。Qubenaの利用者数は、2021年夏時点で50万人に達し、全国の小中学生のおよそ5%が利用するプロダクトになっています。人生をかけた分野で、公教育を支えられるだけの突き抜けたプロダクトをつくることができたと感じています。

──なぜ教育だったのでしょうか?

コンプレックス裏返しですね。中学受験をして入った学校で落ちこぼれた経験が影響しています。東京の私立開成中学校に入学しましたが、入学した途端に勉強がわからなくなってしまいました。小学校までは勉強ができるタイプだったにもかかわらずうまくレールに乗れなかったことへのコンプレックスが「どうすれば、人はうまく学べるのか」という問いとして自分の中に資産化され、教育への関心につながったように思います。

──教育に人生を捧げていたのに、なぜ転職しようと考えたのですか?

Qubenaのリリースとシェア獲得によって、教育というフィールドではある程度やりきったと感じたからです。異なる分野にチャレンジしたいと思い、医療かリーガルテック系のプロダクト開発に携わることを考えました。

──次のステージを医療かリーガルテックと考えたのはなぜですか?

専門性が深い分野の開発に取り組みたいと思ったからです。というのは、教育分野での開発を通して、多様な職種と連携してプロダクトの最適解を出し、成果をあげる型のようなものをある程度自分の中に持つことができました。そしてそれは、専門性が深い分野での開発であればあるほど発揮できて、他のエンジニアとの違いが出せると感じていました。この「専門性の深さ」にあてはまる分野が、医療かリーガルテックでした。

また、教育や医療、行政の分野はDX化が遅れている印象があり、今、取り組むなら何か?と考えると、元々関心があった医療だとも判断しました。

医療への関心については、妻が精神科医で、家でも専門的な話をしてくれるので、話を聞くうちに関心が高まっていました。


「人生の最後のシーン」のためのソフトウェア開発にチャレンジしたい


──そのような背景がある中で、ファストドクターに応募したのはなぜだったんでしょうか?

2019年の「スタートアップ・カタパルト」(※)で、ファストドクターが1位をとったことが印象に残っていました。

自分が創業したガラパゴスを抑えて共同代表の菊池さんのプレゼンやファストドクターの事業が評価された。そのファストドクターがCTOを募集していることを知り、運命的に感じました。プロダクト開発責任者やエンジニア組織の構築・マネジメント、AIを用いたサービス開発などの経験・スキルも生かせると思ったんです。

※ICCパートナーズ株式会社が開催するシード/アーリーステージに特化したピッチコンテスト。


──他社の選考も受けていらっしゃいましたが、最終的にファストドクターへの入社を決めた理由は何ですか?

大きく分けると3つあります。

1つめは、仕事の内容として、ファストドクター事業のリッチで複雑なオペレーションには、AIや最適化問題で解決できる課題がふんだんにありそうだったからです。

例えば、往診時に、最初に電話を受けてから医師が患者さん宅に到着するまで平均1時間20分ほどかかっている状況に対して、AIを用いれば、医師の配置や移動経路の最適化や、言語処理による問診の自動化なども図れます。

2つめに、事業の内容として、医療費の増大という圧倒的な社会課題に取り組めること、また、地域の医療を支えることや、人生の最後のシーンであるお看取りに関わることができることにも魅力を感じました。

私がそれまで携わっていた教育というのは、人生の始まりに武器を養っていく、『かけがえのないと思える』『手放しで大事だと思える』事業でした。一方、医療という分野では、医療費の増大に伴い、病院の病床数が減ることが決まっています。今後はご自宅でお亡くなりになる方が増えていくでしょう。病院に入院できないことは不安ではありますが、人生の最後の時間を家族と過ごせるというのは、なんというか「言葉にできない」出来事だと思います。最後にお礼を言うかもしれない、思い出を話すかもしれない。そういった時間に関わることができるのは凄い経験だと思いました。

3つめは、セレンディピティ(偶然性)が重なっていたことです。シリーズA調達をしているスタートアップの中でオフィスと家が近かったことや(笑)、私が創業したガラパゴスと同じ舞台でピッチしていたことに縁を感じました。


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少数精鋭に合流すること

──採用選考でのファストドクターの印象はどうでしたか?

面接で聞いた開発組織の現状は、人数が少なく、まだまだいろいろなものがそろっていないとのことでしたが、マイナスには感じず、むしろ、少数精鋭で作られたいいシステムだと思いました。ファストドクターの複雑なオペレーションがちゃんと回るシステムを、これだけ少人数でつくっているのは手放しにすごいことですよ。

ただ、今後それなりの規模のシステムにしていくには、CTOの採用に失敗するとまずいだろうと、候補者ながら感じていました。

──入社後、開発環境・組織を実際に見てみてどう感じましたか?

大きなギャップはありませんでしたが、やはり開発スピードが速いなと感じます。

というのも、入社してすぐに開発項目をもらったのですが、4日目に「間に合いますか?」と聞かれて。私も確認不足だったのですが、よくよく聞くと、入社5日目までに終わらせないといけないものだったのです。そこからちゃんと間に合わせて、予定どおりリリースできたのでよかったです(笑)。


自然現象に相対するためのスピードとは

──ファストドクターはなぜそんなにスピード感を持っているのでしょうか?

まずはスタートアップだからこそ、ですね。
また、ファストドクター特有の事情で言うと、コロナの第6波です。これは自然現象なので、私たちの都合で待ってはくれません。開発スピード次第で提供できることが変わってしまうので、迅速に取り組んでいます。それが根本的な価値となります。

──そのスピード感の中で、どうやって質の担保やリスクマネジメントをしているのでしょうか?

押さえるべきところは必ず押さえるということを心がけ、最適なリスク度合いとスピードをコントロールしています。結局は、どれくらいのリスクを許容してスピードを維持するかという最適化問題で、100点は絶対にないので、必ず押さえるべきところを外さないようにしてバランスをとっています。


※次回は、技術開発部のミッションや、開発内容について伺います。
  第2回の記事はこちら



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