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医師インタビュー「与えられた枠組みだけでなく、様々なスキルの掛け合わせで学び続ける限り、医療者の可能性は広がっていく」

ファストドクターには医師とビジネスサイドの二刀流で勤務している医師がいます。

今回は、現役の救急医であり、ファストドクターで医療品質の担保を担っている大久保先生に、

  • なぜ病院を離れ、ファストドクターを選んだのか

  • ファストドクターの常勤医としての働き方とは

  • ファストドクターで成し遂げたいこととは

などをインタビューしてみました。

大久保 浩一先生
2003年 筑波大学医学専門学群 卒業。2016年 九州大学大学院 医学系学府 医療経営・管理学専攻 修了。日本救急医学会専門医。
初期研修後、救急医として18年間勤務。大分岡病院救急科 医長から部長まで歴任し、川崎幸病院救急科 医長を経て、2022年ファストドクターに入社し医療統括部企画室でマネージャーを担う。

2023年9月のインタビュー時点

①ファストドクターで働きはじめたきっかけ

ーー大久保先生は、ファストドクターに入社する前は救急医として働いていたのですね。

そうですね、私はもともと救急医として働いていました。
主に二次救急の現場に従事していました。ご想像通り、二次救急の現場では様々な患者さんが運ばれてきます。地域によって異なるところはありますが、命に別状がなくとも何らかの社会的背景を抱えていることが多く、患者さんの複雑な背景全体を把握して診療に当たることに大変さを感じる反面でやりがいもありました。
ただ、現場で働いているなかで直面していたのが、「医師1人でできることが限られている」という点です。医師1人で24時間365日の患者対応はできません。医療現場においては、専門性の異なる医師・看護師・理学療法士・ソーシャルワーカーなどの多くの専門家の協力が必要となります。
しかし、その専門家のそれぞれが多忙につきコミュニケーションを取る時間を確保できないことや、職種間のヒエラルキーによって有益なコミュニケーションを図ることができないことなどの問題があり、無意識に必要な協力を妨げています。実際、医師・看護師・理学療法士・ソーシャルワーカーなどと連携した"チーム医療"が上手く実現できている病院はそこまで多くないと感じています。
この課題に対し、「病院経営という視点で病院全体を変えていく必要性があるのではないか?」と考えるようになりました。
しかし、このまま病院で勤務していても病院経営に携わるようになるのは50代・60代と、遠い先の話になります。その順番待ちをするのは違うなと思い、一旦医療の現場から離れ、経営やビジネスを学びたいと思いました。

ーー経営やビジネスを学びたいと考えた時に、どうしてファストドクターを選択したのでしょうか?

実は転職活動をするまでは、ファストドクターの存在を知りませんでした。
私が医師向けではないビジネス系の転職サイトに登録した際に「ファストドクターという会社がありますよ」とエージェントさんから勧められたことがきっかけで認知しました。
調べてみると、正直まだ完璧に熟成されているシステムではないなとは思いましたが、ファストドクターには医療費の削減など含めて、病院の中にいてもできないことを成し遂げられるポテンシャルを感じました。
そして、ファストドクターには世の中を変える力があって、病院の中にいてもできないことを成し遂げようとするエネルギーを感じました。経営陣との面談では、会社のビジョンを明確に示しミッションを追求する菊池先生、ビジョンの実現に向けてデジタル面や経営面を先導する水野さん、熱量を持って事業を語る小石さんと面談することができ、創業メンバーそれぞれの違った視点・角度から会社を牽引していることを確信できました。
また、私は自身のビジネスマンとしての成長も望んでいましたので、ファストドクターであればそのは成長が期待できるのではないかと思いました。

②ファストドクターでの働き方

ーー普段はファストドクターの常勤医として、どのような働き方をされているのでしょうか?

ファストドクターでは、週に3回は医師として救急往診を行い、週に2回は本社へ行って医療統括部のメンバーとして診療現場の改善・向上を図っています
具体的には、「医療現場をいかに良くしていくか」というということにフォーカスして仕事をしており、主に救急往診現場の改善に努めています。
最近の事例をお話しすると、カルテの項目を細かく分割して刷新し、救急往診時の診断に対する医師の思考の過程を追えるように改善しました。これは救急往診に限らず医療の現場ではどういう診断を下し、どんな検査や処置を行ったのか、なぜこの処方にしたのかという思考は個々の医師に依存してしまう傾向があります。ファストドクターのように大規模な組織において診断までの過程が可視化できれば、そこから脱却し、さらに質の高い医療行為の提供に繋がる可能性があると考えています。

ーーファストドクターで勤務してから先生の中での心境的な変化はありましたか?

目の前の患者さんに全力を尽くすだけはない、マスの視点からの患者さんとの関わり方を持てるようになりました。
これまで、1人の医師が対100人、対1000人の患者さんと関わるためには、自治体や厚生労働省単位での取り組みを行わなければなりませんでした。しかし、ファストドクターのような組織であれば、往診医の意見を吸い上げて全体最適を図ることで多くの患者体験を改善・向上させることにより、多くの患者と関わることを実現できます。実際、私自身やチームが実現したいと思っていることのひとつである「医療品質の均一化」は形になってきている段階で、社会のためになっているのではないかと実感しています。
おそらく、私だけではなくファストドクターに勤務する他の医療者も、病院だけでは得難いやりがいや社会貢献性を感じていると思います。

ーーファストドクターでは多くの医療者が活躍しています。医療者がダブルメジャーとしてビジネススキルを習得することについて、大久保先生はどのようなことを考えていますか?

これに関しては、最近流行っているリスキリングという文脈でも考えられることがありますね。与えられた枠組みだけでなく、様々なスキルの掛け合わせで学び続けることで、医療者の可能性は広がっていくと考えます。

医療に限った話ではありませんが、AIなどに代替される仕事も出てきてしまった今、1つのスキルを磨くことや同じことをずっとやり続けることは美徳ではあると思いますが、それだけでは通用しない世界になってきているとも思います。そのため、今後は特化することに集中するのではなく多方面にアンテナを張ってスキルの掛け算を図っていく必要があります。
先日、ファストドクターが主催したヘルステックハッカソンがあり、「業務効率を上げるためにテクノロジーの力で解決できることは何か」についてエンジニアと意見を交わしながらプロダクト開発を行いました。医師とエンジニアでそれぞれのチームになって、医師からの現場の声に耳を傾けながらエンジニアが開発に落としていくというプロセスだったのですが、私のチームは、患者の症状に合わせて適切な病院とマッチングするためのプロダクトを開発しました。医療従事者が多大な時間を費やしていた仕事が自身の経験を元に効率化されるという経験は初めてのことだったので、視野が広がる経験になりました。これらは病院の中で一臨床医として働く中ではなかなかできない体験だと思います。
すごく手前味噌になりますが、「専門の領域以外も含めて成長する」という観点を常に持ち続けていくことで、自身の医師としての可能性を拡げ続けられるような気がしています。

③ファストドクターでの働く魅力とは

ーーファストドクターの常勤医として働く魅力はどのようなものがありますか?

内容が重複してしまうかもしれませんが、やはり1番の魅力は、社会に対して成し遂げたいことが形になる過程を経験できることです。
例えば、医療統括部では救急往診のマニュアルやフロー構築を行っています。これは単に業務を整理するのではなく、世の中の実情に合わせるためにマスな視点から医療を見つめ、現場に落とし込めるようなものにしなければなりません。とても難しいものですが、ファストドクターで働く先生方が患者さんに提供する医療に直結するため、影響範囲も大きく、やりがいのある魅力的な業務だと感じています。
また、私自身も救急往診の現場に出ていますが、他の先生方も改善の結果を肌で感じることができていると思います。
さらに、救急往診に限らずファストドクターで働くなかで自分のスキルや知識を社会に還元する方法を学ぶことができる環境だと思います。現在のファストドクターでは特に深夜帯の救急往診を担っていただける先生方を探していますが、深夜の救急往診で医療現場での経験を重ねながら、日中は自身の成し遂げたいことのために専念するという働き方もできるのではないでしょうか。
また、病院の勤務医経験だけでは得られないような成長の機会があることも魅力です。病院の世界しか知らないと視座が変わらないですし、部分最適になってしまう側面もあると思います。「優秀でやる気に溢れていて、前向きな人しかいない世界」がここにはありますので、若い先生方にはぜひ経験して欲しいと思います。

ーー救急往診の現場で働くことの魅力とは、改めてどのようなものでしょうか。

救急往診といえど、急性期の対応だけではなく、終末期の患者さんの対応をすることもあります。そういうことを鑑みた上で一言で表現するなら、「患者さんや患者さんの家族とともに作り上げる医療にも携われる」ことでしょうか。
今までは救急医として、人の命を救うことに力を注いできましたが、ファストドクターで往診医として働くことで、在宅医療を学ぶ経験にもなっています。
私は人と話すことが好きで、患者さんや患者さんの家族と話をするなかで向き合える「人生」というものがあると思っています。疾病や症状に向き合うだけではなく、その方の「人生」に包括的に向き合えることはとてもやりがいのあることです。その方の人生の最期にどう寄り添うのか、家族との時間をどうやっていいものにしていくのか、単に医療を技術として提供するのではなく、ひとりの人間としての力が試されることから、いつかはそのような現場に重点を置いた働き方もしてみたいと思えるようになりました。
ファストドクターで働く先生方には、現場の魅力というものも感じていただきたいですね。

ーー最後に、大久保先生がファストドクターで成し遂げたいことを教えてください。

経営スキル・ビジネススキルを身につけ、最終的には組織開発の観点で起業し、「チーム医療」に関する課題を解きたいと考えています。
まだその明確な答えは出ていませんが、そのために、私がメンバーとして良いチームを作っていくのではなく、私が外から関わることで良いチームを作れるようになっていきたいと思っています。そうでなければ複数のチームを良くすることができず、医療業界を変化させることができないためです。
医療という分野にはデジタルの力が必要であることは明確で、ファストドクターにはデジタルの力によって医療業界をより良く変えるパワーがあります。
今はまだ自分の課題に対する答えを模索しながら、いろいろな可能性を追求している段階です。しかし、ここで経験しているもの全てが自分の糧になっていることは間違いないと信じています。これからも日本の医療のために仲間と共に努力したいと思いますので、一緒に切磋琢磨してくださる方がいたらぜひご応募ください。

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